リサーチ・アイ No.2024-063 衆院選後の拡張政策で財政黒字化は困難に ― 求められる「賢い支出」と「供給力強化」 ― 2024年10月29日 藤本一輝、後藤俊平10月27日投開票の衆議院選挙で、与党の自民・公明両党は選挙前から議席を大幅に減らし、過半数割れ。この結果を受けて、自民党・石破首相は野党との連立・閣外協力を目指す構え。連立・閣外協力により、わが国の経済政策は財政拡張色を強める可能性大。自民・公明両党は、公約で低所得者への給付拡大を主張。加えて、野党と連立・閣外協力をするために、野党が掲げる減税やエネルギー価格抑制策の一部を取り入れる可能性も。こうした政策は、家計の可処分所得を増加させることで、短期的にはわが国の需要喚起につながるものの、以下2点の副作用も指摘可能。第1に、財政健全化の後退。政府は2025年度のプライマリーバランスの黒字化目標を掲げているが、石破首相が選挙前に掲げた13兆円以上の補正予算編成で赤字に転落する見通し。これに加えて、野党との連立・閣外協力の過程で減税やさらなる歳出拡大が行われた場合、赤字幅は一段と拡大。広範囲な減税やエネルギー関連施策など対象を限定しないバラマキ的な支援は避け、低所得者層などにターゲットを絞った「賢い支出」を目指す必要。第2に、供給不足の深刻化。内需の拡大とともに、早晩わが国のGDPギャップは需要超過に転じる見通し。こうしたなかで需要喚起を行うと、供給不足が一段と深刻化する恐れも。持続的な成長のため、政府は需要刺激策ではなく「供給力強化」に向けた経済政策に注力する必要。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)