脱炭素社会への移行では、新たな技術が必要となる一方、不要となる技術や失われる仕事もあり、経済構造の変化に取り残される企業・労働者が増える懸念。国際的には、誰一人取り残さない“公正な移行(Just Transition)”が重要との共通認識。
一方、わが国の気候関連政策の中核を担うGX戦略は産業競争力を重視。脱炭素化した世界でわが国経済が成長を維持するには競争力強化が不可欠。しかし、わが国にも取り残されるリスクのある企業等は多く、公正な移行を重視した政策も必要。
わが国は、かつて石炭依存からの脱却(脱炭鉱)において公正な移行に取り組んだ経験あり。今後、わが国政府には、脱炭鉱の経験等も踏まえて、産業競争力の強化に加えて、公正な移行も重視した政策運営が必要。具体的には以下の通り。
①産業競争力×公正な移行に向けた政策分野横断型の行政組織の設立
公正な移行には産業や労働、教育、地域といった様々な分野の施策が必要。司令塔となる行政組織を設立し、分野横断的に一貫した政策運営を行うことが重要。
②取り残されるリスクの高い主体(産業・企業・労働者・地域)の特定
あらゆる企業に脱炭素が求められ、多排出セクター以外にも取り残されるリスク。産業、企業、労働者といった様々な観点からリスクの高い主体を特定する必要。
③産業別ロードマップ・産業構造の将来見通しの明確化
取り残される産業・企業を減らすため、各産業・企業の指針となる脱炭素への道筋(ロードマップ)を示すことが重要。産業別ロードマップに加えて、産業構造の将来見通しを示して産業を超えた事業転換・労働移動を促すべき。
④公正な移行に向けた多面的な政策枠組み(公正な移行戦略)の策定・推進
取り残されるリスクの高い主体は、技術面以外にも様々な課題を抱えており、労働、教育、地域経済など多面的な支援策が必要。企業連携やM&A等の促進も重要に。
⑤地域起点の公正な移行の推進
産業構造や脱炭素に向けた課題には地域差。各地域で課題を見極め、地域版ロードマップ・公正な移行戦略を策定すべき。地域内の労働移動促進や産業振興も重要。
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<参考>日本総研主催シンポジウム(2024/9/17開催)
脱炭素社会への「公正な移行」に向けた企業の役割~ビジネスモデルと人材の転換をいかに実現するか~
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