JRIレビュー Vol.1,No.112
欧州経済見通し
2023年12月26日 松田健太郎、立石宗一郎、藤本一輝
ユーロ圏景気は、長らく続いた減速局面から底打ちに転じると予想する。既往の金融引き締めの浸透が設備投資や住宅投資を下押しするものの、インフレ圧力は緩和し、実質所得の回復を通じて個人消費が持ち直す見通しである。
欧州中央銀行(ECB)は政策金利を現行水準で据え置いた後、賃金上昇圧力の低下を確認し、2024年後半に利下げに転じるとみられる。一方、財政政策の面では、EU加盟国の財政再建計画が柔軟に運用されることで、過度な緊縮財政は回避され、家計・企業への支援や成長分野への投資などが景気を下支えすると見込まれる。
イギリスでは、景気低迷が続く見通しである。労働供給の不足が続いているほか、物価高などを背景に労働者による賃上げ要求が強まっており、インフレ率が高止まりする見込みである。これにより高金利が持続し、景気が下押しされると予想する。
メインシナリオに対するリスクは、①不動産価格調整の長期化、②南欧を中心とした財政不安、③移民排斥による労働供給の減少である。また、中長期的には、中国製電気自動車の輸入規制を巡るEUと中国の貿易対立が生じることで、中国産原材料の調達が困難化し、電気自動車の普及に支障をきたすリスクに注意が必要である。
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