ビューポイント No.2023-016
供給力の強化を経済対策の中心に ― 需要刺激策はインフレを助長、人手不足の解消が急務 ―
2023年11月21日 西岡慎一、井上肇、後藤俊平
今般の経済対策は巨額にのぼり、その内容も、物価高対策、賃上げ促進、国内投資活性化、国土強靭化など多岐にわたる。しかし、コロナ流行後、この時期の大盤振る舞いが恒例化し、財政規律の緩みが懸念される。外部のチェックが効きにくい基金や予備費のあり方も見直す余地がある。
現在のわが国には大規模な財政出動は不要である。経済はコロナ禍の苦境を脱して回復しており、最近では供給不足が主たる問題である。需要増に供給が追いついておらず、サービス業などでは営業時間の短縮が広がっている。建設業や製造業などでも人手不足が深刻化し、幅広い産業の設備投資の足かせとなっている。人手不足の産業では賃金が大幅に上昇し、物価上昇につながっている。巨額の経済対策が需要を一段と刺激し、インフレを助長するリスクがある。
現下のわが国の喫緊の課題は供給力の強化である。とくに、人手不足が設備投資の 停滞を招き、生産性の向上を妨げると、高インフレが家計を圧迫し、賃金上昇のメリットが消滅する。この点は政府も認識しており、今般の経済対策にも多数の施策が盛り込まれている。政府にはそうした供給力強化に政策資源を集中することが望まれる。今後は、外国人も含めた労働力人口の増加に向けた取り組みが一段と重要になる。
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