先端技術リサーチ
大規模言語モデルのビジネス活用の新展開 ～ChatGPTのプロンプトエンジニアリングを超えた活用法と今後の展望～
2023年10月10日 先端技術ラボ 近藤浩史、門脇一真、工藤剛
大規模言語モデル（LLM：Large Language Model）をベースとした対話型AIサービスChatGPTの活用が進んでいる。ChatGPTに投げかける指示文の工夫（プロンプトエンジニアリング）により処理能力を引き出すことで、ChatGPTはアイディエーションや文書作成の効率化などに使用されている。
本レポートでは、ChatGPTをプロンプトエンジニアリングによって有効活用することを超えた、より進んだLLMのビジネス活用方法について、大きく2点を解説した。
第一に、Web上の一般的な情報に留まらず、LLMに組織の固有知識（業務知識、業務マニュアルなど）を反映させて利用する方法である。RAG（Retrieval-Augmented Generation）と呼ばれる手法が代表的で、LLMが組織の内部文書などを元に応答する手法である。また、LLMの性能が不足する場合には、LLM自体をチューニングして用いる方法もある。
第二にChatGPT以外のLLMの活用である。様々な組織がChatGPTと同等のLLMを開発し、公開している。LLMの実行環境に高いセキュリティを求める領域や、LLMに高い専門性を求める領域で、ChatGPT以外のオープンなLLMをチューニングして用いる需要がある。また、様々なLLMを使いこなすためのツール群も開発されることで、組織においてChatGPT以外のLLMも活用の選択肢になり始めている。
また、本レポートでは上述の動向を踏まえた今後の展望についても解説した。具体的には、①LLMへの過度な期待が落ち着き、慎重に活用先を見極めるフェーズに移行すること、②LLM活用の深化として、まずはRAGの活用が進展すること、③データセットの整備やモデル開発の共同化の動きが活発化すること、などを挙げた。
本レポートが、今後のLLMのビジネス活用動向の理解ならびに、各企業における活用検討の一助となれば幸いである。
大規模言語モデルのビジネス活用の新展開
～ChatGPTのプロンプトエンジニアリングを超えた活用法と今後の展望～
