JRIレビュー Vol.6,No.109
欧州経済見通し
2023年07月27日 松田健太郎、後藤俊平、藤本一輝
ユーロ圏では、2024年にかけて低成長が続く見通しである。実質所得の回復により個人消費の持ち直しが見込まれるものの、金融引き締めの継続が景気を下押すことで、回復ペースは緩慢にとどまると予想する。
基調的なインフレ圧力が根強く残ることから、欧州中央銀行(ECB)は、2023年秋頃まで利上げを続けるとみられる。一方、財政政策面では、加盟国の財政再建計画の柔軟化などから過度な緊縮財政は回避され、成長分野への投資などが景気を下支えすると見込まれる。
イギリスでも、景気低迷が続く見通しである。物価高などを背景に労働者による賃上げ要求が強まっており、ユーロ圏以上に高インフレが長期化する見込みである。これにより、家計の購買力低下や金融引き締めの長期化が景気を下押しすると予想する。
メインシナリオに対するリスクは、厳冬などを受けた天然ガス価格の高騰や、ノンバンクを起点とする金融不安の再燃などによる景気の大幅な下振れである。また、中長期的には、西側諸国で進む脱中国依存の動きが欧州の貿易を抑制する恐れもある。
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