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JRIレビュー Vol.2, No.97

高齢者の孤独・孤立対策にどう取り組むかーイギリスの実践から得られる示唆

2022年03月07日 岡元真希子


わが国が孤独・孤立対策として、すでに法律に盛り込まれている孤立に加えて、孤独についても政策の対象とした点は注目に値する。本稿では、孤独・孤立が健康や生活に及ぼす影響が大きくなりやすい高齢者に焦点を絞り、これまでのわが国の取り組みの成果と限界を指摘した後、取り組みが先行するイギリスから得られる示唆を踏まえ、わが国における対策の在り方を考察する。

2021年12月に取りまとめられた孤独・孤立対策の重点計画に基づき幅広い施策が予定されているが、これまでの対策について以下三つの課題が指摘できる。第1は、孤独・孤立に関する実態把握ならびにその情報の活用が不足している点である。孤立に関する公的調査は定期的に行われているものの、解消が必要なほど深刻な状態にあるかどうかの判断はなされておらず、調査結果を対策に活用できていない。孤独に関する公的統計は存在しない。第2は、自治体による対策が、高齢者の孤立の解消というよりも亡くなった際の早期発見に力点が置かれてきた点である。第3は、孤独・孤立解消につながる交流の場が数多く設けられているものの、成果に関する評価が不十分である点、ならびに孤独・孤立解消が必要な人への利用勧奨が弱い点である。

イギリスは2018年に政府として孤独対策に取り組むと宣言し、担当大臣を任命した。政府は、孤独対策においてもエビデンスを重視し、孤独に関する全国指標の開発に優先的に取り組んだ。孤立に関しては、人との交流など関連する生活実態を週単位の高頻度で調査し、新型コロナウイルス感染拡大に伴うロックダウンの影響などを計測している。
 国に先行して孤独・孤立対策に取り組んできた地方自治体では、地域における孤独・孤立リスクを分析したうえで戦略と行動計画を立案し、死亡届などの行政手続きを手がかりに住民の孤独・孤立リスクを検知するなど、対応手順を標準化している。
 さらに、孤独・孤立解消に取り組む民間非営利団体の活動が活発である。代表的なのがビフレンディング(befriending)である。男性に特化した趣味を通じた孤独・孤立解消策であるメンズ・シェッドなどの取り組みもある。これらの活動は、助成者や第三者機関により評価が行われ、社会的投資収益率が計測されるなど、効果がチェックされる。それが助成や政府へのロビイングの根拠にもなっている。

こうしたイギリスの事例に照らすと、わが国が孤独・孤立対策を進めるうえで以下の3点が重要である。
・ 第1は、孤独・孤立に関する指標を開発し、実態把握と取り組みの成果の評価に活用することにより、根拠に基づいて効果が大きい取り組みに優先的に資源配分することである。とくに孤独の測定にあたって、日本語ではひとりでいる状態を楽しむことを意味する「ソリチュード」と、つらさを表す「ロンリネス」の両方を指す言葉として「孤独」が用いられる点に配慮する必要がある。後者の「孤独」を把握するにあたっては「人との付き合いがない」「取り残されている」「他の人たちから孤立している」などの状態を提示して感じる頻度あるいは度合いを尋ねる間接尺度を用いた方法が適切であろう。
・ 第2は、孤独・孤立リスクの検知と早期介入である。孤独・孤立を引き起こすきっかけともなる家族の死亡や転居などは、自治体への届け出を通じて検知可能であり、行政手続きと孤独・孤立軽減策の利用勧奨を連携すれば、リスクが高まったタイミングでの早期対応を効率的に実施できる。
・ 第3は、当事者相互で孤独・孤立を解消していく仕組みの構築である。孤独・孤立解消の初期段階では専門職や研修を受けたボランティア等の相談援助技術を有する人材が対応するとしても、その後は当事者同士で相互に支え合う関係を構築できれば、人的資源を効率的に活用できるだけでなく、「助ける側」「助けられる側」という関係の固定化を防ぎ、孤独・孤立したときに互いに助けを求めやすい社会の醸成が期待できる。

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