コンサルティングサービス
経営コラム
経済・政策レポート
会社情報

メディア掲載・書籍

掲載情報

シーズをつかめ シンクタンクが提案する再生への処方せん
ICタグ使った廃棄物リサイクル、建設分野でも実証実験開始

出典日刊建設工業新聞 2004年10月25日

建設廃棄物の管理はどう進化するか

建設現場から排出される廃棄物は分別・梱包(こんぽう)され、それぞれにICタグと呼ばれる電子情報を書き込んだ荷札が付けられてトラックに載せられる。不法投棄防止、分別リサイクルが主な目的だ。現在、業界ではこのような仕組みの導入を目指し、ICタグの様々な検討を行っている。実現すれば、情報と物がひとつになり、従来のマニフェストと比べて追跡力があがるので、業界の信用力向上に大きな弾みがつく。

動脈分野から静脈分野へ適用広がる

ICタグはもともと商品管理や物流などへの期待が大きく、世界的に次世代IT技術として注目されてきた。すでに米国では、大手のスーパーチェーンであるウォルマートが搬入する商品へのICタグの添付を義務付ける方針を決定し、世界中の企業がこれに対応することとなった。
ICタグには、同時に多数の情報を読み書きすることができるという特徴があるので、バーコードと比べて、検品などの管理が容易になる。国内ではJP貨物などで適用が始まっており、コンテナに添付することによって、管理コストを毎年10億円程度削減することを見込んでいる。一方、商品管理などのいわゆる動脈分野だけでなく、廃棄・リサイクルといった静脈分野にも適用の動きが始まった。これまでに、家電リサイクル、自動車リサイクル、医療廃棄物の適正廃棄などの分野に検討が進められており、建築廃棄物にも実証が始まったのだ。この分野は、これまで余り情報管理されていなかったため、作業効率向上やコストダウンに絶大な効果を発揮する。

建設分野でも実証実験開始

課題はだれが導入コストを負担するか

このように、期待が高いICタグだが、現在のところ普及のめどが立ったわけではない。その最大の理由は、ICタグシステムの導入コストをだれがどのように負担するかが明確になっていないからだ。工場内の効率向上のように1社で利用が完結する場合は、設備投資に対するメリットが明確になる。しかし、ICタグの主要マーケットである物流の分野では、複数の関係者がいるためにメリットが分散することになる。このような場合は、メリットが最大となる人が関係者のすべての設備を導入し、他の関係者からサービスフィーを徴収するという方法が現実的な対応策となる。 ただ、自社の物流改善を行うために、新たにICタグを使ったサービスビジネスまで立ち上げることは通常は考えられない。このような背景から、大規模なICタグ利用はなかなか進まないのだ。

民間コンソーシアムがノウハウ蓄積

ICタグを導入し、建設現場の課題を解決するためには、ICタグシステム導入・運営の一括サービスを行うサービス事業者が必要だ。建設現場でこの役割を担うことができるのは、大手建設事業者に自ら高品質なリサイクルを提供することができる、中小規模建設事業者である。一括サービスを行うことによって、ICタグシステムを利用して現場での分別を積極的に行って、廃棄物処理コストを低減するとともに、リサイクルによる環境貢献を行い、元請け事業者の不法投棄リスクを低減することができる。これにより、他の中小規模建設事業者に対する差別性を確保することができるようになる。このサービス事業を始めるためには、まず、サービスビジネスのノウハウを取得する必要がある。現時点では、ICタグのシステムを利用したサービス事業者はいないが、実証試験等で民間企業のコンソーシアムがノウハウの蓄積を開始している。ICタグによる差別化が新たなビジネスチャンスを生もうとしている。

 

メディア掲載・書籍
メディア掲載
書籍