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シーズをつかめ シンクタンクが提案する再生への処方せん
目標を設定し、民間に事業委託

出典:日刊建設工業新聞 2004年7月26日号

英国で広がる「総合ごみ管理」

公共サービスへの市場原理の導入が進んでいる英国では、地域の廃棄物管理の計画にも民間の創意工夫を活用しようという発想が取り入れられている。その1つが、廃棄物行政の本質的な政策目標の達成を契約条件とし、地域の廃棄物管理の計画、ごみ収集から処理施設やリサイクル施設などの建設・運営、副生成物の処理・処分までを一括して民間企業の裁量に委ねる「総合ごみ管理」である。

事業全体を民間にゆだねる総合ごみ管理

総合ごみ管理とは、民間企業に一定のリサイクル率の達成や、埋立率の削減、住民へのサービス水準確保を義務付けた上で、そのために必要となるごみの収集や処理施設の整備・運営、埋立処分、資源リサイクルといった事業を包括的に委ねるものである。民間企業の役割は、決められたエリア内で発生する家庭ごみを、定められたリサイクル率や埋立率の目標に見合うように処理することであり、焼却施設や資源回収施設、中継施設、コンポスト化施設といった施設をどのように組み合わせて配置するかは、民間の裁量に委ねられる。

目標設定し、民間に事業委託

自治体は民間事業者に、ごみ1トン当たりの処理委託費を支払い、目標の達成状況に応じてボーナスを支払う。もちろん、目標に達しない場合には民間側がペナルティーを支払うことになる。収集業務や施設の運転といった個別の業務ではなく、地域で発生したごみの処理事業そのものを一括して委ねるといった格好である。昨今では、倉敷市(岡山県)などでごみの中間処理施設の整備・運営事業にPFI手法が導入されているが、総合ごみ管理は、施設単体ではなく、地域のごみ処理事業にPFI手法を導入したものということができる。

廃棄物マネジメント業者の活躍

もともと英国では、1990年代から環境保護法や強制競争入札(CCT)のもとで、ごみ収集業務について官民が競争し、ごみ処理業務の民間への市場開放が進んできた。90年代の後半になって相次いで導入された総合ごみ管理は、地域の廃棄物管理を民間が実施するという点で、業務委託から一歩進んだ試みということができる。総合ごみ管理を受託しているのは、フランスやベルギーなど民間委託が進んでいる国で実績を積んだ、オニックスやシタといった大手の廃棄物マネジメント会社だ。こうした企業は、市場競争の中で培った幅広いネットワークや、調達管理やコスト管理、人員管理といったマネジメント力を生かして効率的に事業を実施し、利益を上げることができる。廃棄物マネジメントビジネスは、投資リスクもあるがリターンも得られる有望なビジネスとしてとらえているようだ。

 

市民巻き込んだ事業構造の構築を

日本でも最近「市場化テスト(官民の競争入札制度)」の導入が検討されており、民間解放への流れが急速に広まっている。日本には、まだ廃棄物マネジメント事業という業態自体は存在しないが、埼玉県の寄居町で行われているオリックス環境グループにおる産廃処理事業など、大手の資本が産廃処理事業に参画する動きが起こっている。産廃分野と同様に、一般廃棄物分野についても、官民のパートナーシップのあり方が変わろうとしている。つまり、現状の部分的な委託から、官民が政策目標を共有し、住民啓発、収集運搬、中間処理、リサイクルといった地域の廃棄物管理事業全体に民間企業がより深くかかわることになるということだ。日本の場合は、埋立処分の多い英国と異なり、リサイクルが進んできていることから、容器包装に代表されるリサイクルへの取り組みがカギとなる。総合ごみ管理のような包括的なアウトソーシングはややもすると、公共側の責任の放棄や民間への「丸投げ」のようにとらえられがちである。また、民間が収集運搬や処理を担うことで、公共のチェック機能が働かないといった懸念も聞かれる。英国の例では、受託者が設立した事業会社に自治体側のスタッフが参画し、運転情報や財務情報を共有するなどの工夫がなされている。
日本では、地域の廃棄物処理やリサイクル推進の観点から、商社やゼネコン、プラントメーカー、産廃業者やリサイクル業者などがグループを組み透明性の高い形で事業を展開することが、総合ごみ管理ビジネスを進める上で重要であることはもちろん、NPOをはじめとする市民団体や地域住民を巻き込んだ広範な事業構造を構築する必要がある。

 

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