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長期契約のリスク回避 企業・自治体、手法を模索

出典:日経産業新聞 2003年5月15日

ごみ処理施設進む民活導入

「20年という長い運営期間で、いかに利益を確保するかが重要だ」。
千葉県の木更津、君津、富津、袖ヶ浦の4市のゴミを処理する民間主導の第3セクター、かずさクリーンシステム(木更津市)の筆頭株主である新日本製鉄の関係者は強調する。
かずさクリーンシステムは新日鉄が49%を出資、4市の一般廃棄物を中心に1日200tをガス化溶融炉で処理する。資金調達には担保不要のプロジェクトファイナンスを活用、2002年度から20年間の運営収入で、金利を含む借入金を全額返済する計画を立てている。

ただ、運営を請け負う企業にとっては、数10年後のごみ処理量や人口の増減など地域の変化を予測することは難しく、安定的に収益をあげていくためにはハードルがある。

そこで、かずさクリーンシステムは4市から受け取る処理費用を人件費などの固定費と、ごみ処理量に応じて必要な変動費に分離。固定費は最低額を4市に保証してもらい、人口減などでごみが減っても確実に黒字化できる仕組みを整えた。一方、変動費は年度ごとにに見直し、処理量の多い種類のゴミは単位量あたりの処理コストを引き下げる。さらに、方針の変更で三セクから脱退する自治体には、その時点で20年分の処理料金を支払ってもらう契約を盛り込んだ。 企業の裁量がより大きなPFI(プライベート・ファイナンス・イニシアチブ)法に沿ったごみ処理施設の導入も動き出した。民間資金を活用した社会資本整備手法であるPFI法は1999年に施行。ごみ処理についても、法適用による国庫補助が認められている。JFEスチールや旭化成など10社は、岡山県倉敷市などと共同で事業会社となる特定目的会社(SPC)を設立。4月からJFEスチールの西日本製鉄所倉敷地区(倉敷市)で、処理能力が1日550tのごみ処理施設の建設を始めた。2005年4月から2025年3月までの20年間のごみ処理施設の運営を請け負う。

最大の特徴は一般廃棄物だけでなく、産業廃棄物も処理できる点だ。産廃による収益を一般廃棄物の処理コストに還元するなど、従来にない事業展開が可能になる、裁量権を有効活用して事業拡大につなげる方針だ。

自治体にとって、PFIや運営委託といった民間手法は地方財政が厳しさを増す中で、有効な手段になりつつある。ただ、企業が運営リスクを抱えるのと同時に、行政も無縁ではない。「どの企業が信頼できるのか」との懸念は常につきまとう。結果として、現在決まっている民間活用案件は、新日鉄やJFEスチール、日本製鋼所など、各地に地元に大規模事業所を持つ縁のある企業にほぼ落ち着いている。

倉敷市などのごみ処理施設の民間案件をコンサルティングする日本総合研究所は「今後は焼却炉メーカーと地元企業が共同でSPCに出資するなど、複数企業の連携が一層加速する」(木通秀樹・主任研究員)と分析する。

調査を担当した日本総合研究所の金原健一主任研究員は「大学発ベンチャーの優位性が浮き彫りになった」と分析する。

企業と行政の双方にとって最適な手法の模索が続いている。(桑本太)

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