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欧州におけるCSR促進に向けた具体的手法~SRIやレポーティングをめぐる動き

出典:STAKEHOLDERS No.57 2003年

欧州におけるCSR促進に向けた具体的手法

The Copenhagen Centre(行政と企業のCSRに関するパートナーシップの推進を目的に1999年にデンマーク政府が設立した機関。国立のCSR研究所)の作成したマトリクスに基づき、以下7つの側面から、欧州各国のCSR促進のための具体的手法について、特徴的なものを説明したい。
なお、欧州の企業及び政府は、CSRをbeyond The Legal Demandと捉えている。そのため、欧州の政府は企業活動を直接には規制せず、間接的にバックアップするというのが基本姿勢である。

1.Social Labels:
ベルギーでは、2002年1月に、欧州で初めて政府の認定するSocial Labelsを規定する法律が制定された。同ラベルは、特にILOの労働基準に基づき認定されるもので、10月に初めて製品に付された。その他にも、欧州ではフェアトレード、人的資源の活用に関する方針などを基準にラベルが付されるケースが見られる。

2.Social Awards:
ギリシャでは、先日アテネ商工会議所が、CSRに対する先進的な取組みを奨励することを目的に、環境に配慮して事業活動を行った企業などを表彰するAthens Chamber of Commerce Awardを設けた。また、英国でも、チャールズ皇太子が理事長を務めるBusiness in the Communityが Awards for Excellenceを設け、地域貢献プロジェクトに積極的な企業を表彰している。

3.Codes of conducts、Ethical Guidelines:
ナイキ社の児童労働に対して、不買運動が起きたことを受け、衣料品業界を中心に、ILOの労働基準等に基づき行動規範を策定する動きが目立つ。他方、欧州各国でも同様の動きが見られ、たとえばスウェーデンでは、アムネスティ・インターナショナルと企業の協働の下、企業が人権問題にいかに取り組むべきかを定めたSwedish Amnesty Business Group Guidelinesが制定されている。

4.Social Reporting Guidelines:
デンマークでは、Ministry of Social Affairsが、組織の活動による社会的な影響に関する報告のガイドラインである、Guidelines for Social and Ethical Reportingを策定している。また、同国では、欧州内で中小企業向けのガイドラインの必要性が唱えられていることを受け、中小企業に対して社会報告書の概要などについて情報提供するガイドラインも発行されている。
また、英国では、2000年7月に、年金基金に対して、投資銘柄選定における環境や社会面の考慮の有無について、その開示を義務づける改正年金法が施行された。さらに、2001年10月には英国保険協会が、SRIに関する情報開示ガイドラインを投資対象になる企業に対して示し、自らが企業の環境、社会面に配慮して投資を行っていく姿勢を明確化した。
その一方で、政府から、企業に対してより積極的に報告書を策定して公表するよう求める働きかけも見られる。たとえば、ブレア首相は演説の中で、2001年
末までに売上上位350社は環境報告書を作成すべきと述べた。また、環境大臣は、Name & Shame政策(取組みに積極的な上位企業と消極的な下位企業を発表する)を行うとの宣言を行った(ただし、現時点では、上位企業のみ公表されている)。

5.Social Fora&Indices、Social Ratings:
欧州では、SRIを推進する団体が数多く組織されているが、2001年11ガウには、欧州各国(フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、英国)のSRI関連団体が、横断的組織となるEuropean Social Investment Forum(Euro SIF)を結成した。2002年4月に第1回目のシンポジウムが開催され、各国の公共政策の中にいかにSRIを組み込むかなどについて議論がなされた。
なお、英国では、元来Church Investors、SRI Unit Trustsを購入する個人投資家、CharitiesがSRIに熱心であったが、年金法改正および保険協会のガイドライン制定受け、近年、年金基金や保険会社のSRI投資が増加している。英国のSRI残高は2,245億ポンド(2001年)であり、他の欧州諸国はその10分の1以下に過ぎない【表】。これにより、欧州のSRIを索引しているのは英国であることが理解されよう。

【表】世界の社会的責任投資の残高推計(2001年)
10億£
United States/1603.2
United Kingdom/224.5
Canada/21.6
Europe/12.2
Japan/1.3
Australia/0.7
Total/1863.5
(出所)Russell Sparkes "Socially Responsible Investment", John Wiley &Sons,Ltd, 2002

6.SRI&CSR-Related Legislation:

ドイツでは、2001年8月に、政府に年金基金を登録する際に投資において企業の社会的側面を考慮しているか否かの開示を求める法改正が行われた。フランスでは、2001年5月に会社法改正の一環として、「新経済規正法」が成立し、上場企業に対して企業活動の社会的・環境的影響に関する年次報告の作成・公開が義務付けられ、2003年から実施される。
なお、2000年7月に英国の年金法改正が施行されてから3ヶ月後に行われた調査では、8割の年金基金が社会的側面を考慮するポリシーを有しているとされたが、2002年7月現在の調査では、調査対象の14の年金基金の中で9基金はほうしんを開示するに留まるなど、実践の面ではそれほど進んでいない面も指摘されている。

7.CSR Toolkits:
インターネット上で、企業が自社の人的資源に関する方針の包括性についてテストできるツール(デンマーク)や、CSRマネジメント導入および改善時に利用できる数種類のガイドライン(イタリア)がある。

英国における今後の動向

英国における今後の動きとして、以下4点があげられる。
1.2003年の年金法改正で、年金基金が揚げた運用方針を銅の程度まで実際の投資に適用したかについても情報開示を求める動きがある、2.慈善団体にも資産運用時の投資銘柄選定における環境や社会面の考慮の有無について、その開示を義務づけようという動きも出ている、3.会社法改正の議論が進んでおり、取締役に、会社の従業員との関係性や事業活動の関連地域や環境に及ぼす影響を考慮に入れる責務が明記される見込みである、4.他方、3.に対しては、より厳しい内容を求める動きも見られ、Corporate Responsibility法案は、売上500万ポンド以上の企業に対してフランス同様の報告書の策定などを求めている。しかしながら、同法案が成立する可能性は高くないと言われている。

EUマルチ・ステークホルダー・フォーラムの動向

EUでは、マルチ・ステーク・ホルダー・フォーラムを設置し、欧州におけるCSRのあり方を検討している。同フォーラムは、ハイレベルミーティングおよびテーマ別のラウンドテーブルを開催し、2004年6月までに報告書を作成して欧州委員会に提出する予定となっている。2002年10月16日に、第1回ハイレベルミーティングがブラッセルで開催された。 
(文責:CBCC事務局)

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