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「社会に対する責任」という企業経営の視点(5) 環境ISOの延長で議論

出典:日刊工業新聞 2003年2月3日

-国際規格制定の動向-

 国際標準化機構(ISO)は、世界の工業化が進み工業製品が地球規模で流通するようになり世界共通の規格を定める必要から誕生した組織である。我が国のJIS(日本工業規格)もISOの定める国際規格に準拠している。 
このISOが96年9月に発行させたのが、環境マネジメントシステムの国際規格であるISO14001だった。先ず環境に対する方針を明らかにし、それらを具体的にした環境目的・目標を定め、それを実現するため、組織整備、仕事の進め方やその手順などを詳細に決める。 そして、決めた手順に沿って仕事を進め、その結果を克明に記録する。この仕事の進め方(システム)が、規格に沿っているか否かを外部の審査登録機関が審査し、規格を満たしていると認証が与えられ審査機関に登録される、というのがその内容である。
「環境保全」も企業の社会に対する責任の重要な要素であるから、ISO14001もCSRに関連する国際規格ということができるが、CSRの守備範囲の拡大に呼応してより包括的な国際規格を制定しようという動きがいま進行している。
2001年春、ISO理事会はCSRの国際規格化の実現可能性を消費者政策委員会(COPOLCO:規格化に消費者の意見を取り込むための理事会の下の委員会)で検討することとし、理事会に向けて勧告を提出することが決まった。これを受けて委員会はワーキンググループを設置して議論を重ね、昨年5月には規格化に前向きな結論を内容とする報告書を発表している。
報告書はCSR国際規格の輪郭を明示することは時期尚早としているものの、ISO14000シリーズの延長線上に位置するマネジメントシステム規格とすることが望まれるとし、法令遵守、環境保全、消費者保護、公正な労働基準、人権、安全衛生、関係主体とのコミュニケーションのプロセス、贈収賄や汚職に関することを含む企業方針、教育・研修、地域社会との関わり、フィランソロフィーなどとの関連性を示唆している。
昨年9月のISO理事会は、この報告書を参考にして、より高次のアドバイザーグループを「技術管理評議会」という組織に設置し、本年3月までにCSRに関する規格化の是非ならびに適用範囲と形態を検討して報告するよう決議を行っている。
品質保証体制を証明する基準であるISO9000シリーズが発行したとき、日本企業はその対応が遅れ、欧米企業との競争力を低下させたという苦い体験を有している。これがバネとなって、逆にISO14001の認証取得では積極的な動きを見せた。これと同様に、CSRの国際規格化の動向にも早期から関心を払っておく姿勢が必要である。
(出所)日本規格協会

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