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「社会に対する責任」という企業経営の視点(2) リスク管理が利益に貢献

出典:日刊工業新聞 2003年1月13日

-CSRと企業業績の関係性-

ダボス会議を主催するワールド・エコノミック・フォーラムが昨年、発表した世界のCEO1,161人に対するアンケート調査によると、「CSRは企業にとって利益の源泉となる」という考え方に、「全くそう思う」と回答したCEOは30%、「ある程度そう思う」と回答したCEOは38%という結果が得られている。
残念ながら、まったなしの構造改革、リストラに迫られる日本企業では特に、CSR重視が高コスト経営に繋がるという懸念が根強い。しかし、欧米の先進企業では、明らかにパラダイムシフトが生じているように見受けられる。
「CSR重視が利益を生む」と考えられる第一の根拠は、優秀な人的資源の確保と活用という側面にある。人の知的創造性こそが企業成長力の源泉となる時代であることへの異論はなかろう。社員が最もクリエイティビティを発揮してくれる会社にするにはどうしたらよいのか。その解が「社会的に最も尊敬される会社を作ること」だというのである。特に知的生産を担う人材の確保と活用のためには、「高い給料」ではなく、「会社の志」そのものが鍵になるという認識が多くの企業で支持され始めてきた。
第2の根拠は、顧客のブランドロイヤリティ獲得という側面にある。製品ライフサイクルが短くなると同時に、人々の物質的欠乏感が薄れている今日の成熟市場においては、製品の競争力よりも、企業ブランドがマーケットシェアを左右するという現象が顕著になっている。そして、この企業ブランドの形成に、当該企業の社会に対する責任に関する姿勢と行動が大きく影響するというのである。
結果として、CSR重視は企業のリスク管理であるという見方も有力になってきた。例えば、企業が重大な法令違反に該当するような倫理的スキャンダルを生じさせた結果、多くの従業員が自発的に会社を退職し、顧客からの信用も失って売上高も激減する、その結果企業が従前の地位を回復することは全く困難になるというようなケースが、海外でも国内でも頻発しているからである。
一昨年にオランダの金融機関が発表した分析結果によれば、5年間のあいだに発表されたCSRと企業業績の関係性に関する18の実証研究のなかで、環境面での企業のパフォーマンスもしくはその他の社会的側面での企業のパフォーマンスと、財務的なパフォーマンスとのあいだの関係が負の相関にあると結論づけられたものはひとつもなかったと報告されている。CSRと企業業績は、今日、コインの裏表というべき関係にある。 

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