コンサルティングサービス
経営コラム
経済・政策レポート
会社情報

メディア掲載・書籍

掲載情報

「社会に対する責任」という企業経営の視点(1) 評価基準の範囲拡大

出典:日刊工業新聞 2003年1月6日

-企業の社会的責任とは-

「社会をお騒がせしたことを深くお詫びします」。昨年、こうした声が度々企業トップから発せられた。いま改めて、企業の社会に対する責任とは何かが問われている。 これまで多くのトップは「より良い商品・サービスを提供すること」、「法令を遵守し、倫理的行動をとること」、「収益をあげ、税金を納めること」、「株主やオーナーに配当すること」などを企業の社会に対する責任と捉えてきた。 しかし、求められる責任概念の範囲は今日、大きく拡大している。積極的な情報開示、誠実な顧客対応、社員の育児・介護への配慮、男女間の機会均等、環境への配慮、社会貢献活動への関与、NGO/NPOとの協力・連携、貧困や紛争解決などの世界的諸課題解決への行動など、さまざまな要請に企業はさらされている。
製品・サービス市場、労働市場、資本市場など企業が対峙するさまざまな市場において、従来とは異なる基準で企業を評価する動きが出てきている。例えば、誠実な顧客対応がなされているか否かが顧客の企業選択の重要な基準となっている。NGOは時に消費者にボイコットを呼び掛けるなどの手段で企業に意見を表明するようになってきている。 新卒学生は、企業がどのような環境への配慮を講じているかを企業選択の重要な鍵と捉えている。 さらに、投資家は企業が顧客、NGO、従業員の広範な要請にどのように応え、そのことを積極的に情報開示しているか否かで投資銘柄を決定しようとしている。加えて政府セクターも、企業が積極的に社会に対する責任を果たしていくことを歓迎し、これを支持する政策を打ち出している。
こうした傾向が、最も鮮明なのが欧州である。欧州では、CSR(コーポレート・ソーシャル・レスポンシビリティ)という言葉で広義の企業の社会に対する責任を指し示している。そしてCSRの欠如を問う声は、ときに企業批判キャンペーンなどのかたちで、「要請」ではなく「圧力」として企業に襲いかかる。 一方、企業の側に先駆的にCSRに配慮した企業行動を採っていく、それによって競争優位を確立する戦略を採るところも生まれてきている。ブリッセルに本部をおく「CSR Europe」はそうした企業のコンソーシアムの代表例である。ネスレ、ユニリバー、フォルクスワーゲン、シェル、BTなどの欧州企業はもとより欧州市場を重視するIBM、コカコーラ、P&G、GMなどの米国企業を含む57社がスポンサーとなって、収益確保と持続的発展を約束する道筋としてのCSR促進をうたっている。CSR重視の経営戦略は今日、欧州企業の大きな潮流となっている。  

メディア掲載・書籍
メディア掲載
書籍