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Date Watcher 第23回地域の自立と環境経済を考える

出典:プラントエンジニア 2003年2月号

フード・マイレージに見る日本の現状

フード・マイル(Food Mile)という考え方がある。英国の消費者運動家であるTim Lang氏が提唱した 概念で、食料の生産地から食卓までのトン距離を定量化しようという試みだ。食料と供給のあり方を見直し、なるべく地域内で生産された農産物を消費することに より環境に対する負荷を低下させていこうという運動である。近年、欧州の消費者グループか環境団体を中心に広がっている。
日本でも農林水産政策研究所の中田哲也政策研究調整官が試算を行っている(農林水産政策研究所レビューNo.2、2001年12月)。ここでは、輸入食料に関わるフード・マイレージ=輸入相手国別の食料輸入量×輸出国から日本までの輸送距離 と定義される(輸送距離は輸入相手国別に計測し集計したものが全体のフードマイレージとなる)。この試算によれば、2000年の日本の食料輸入総量は約5300万トンで、これに輸送距離を乗じたフード・マイレージは約5000億トン・キロメートル。これは国内における1年間のすべての貨物輸送量にほぼ匹敵する水準と中田氏は指摘している。また、日本のフード・ マイレージは、韓国の約3.4倍、米国の約3.7倍という水準に相当する。

環境経済には地域の自立が求められる

興味深いのは人口1人当たりのフード・マイレージ。日本人1人当たりが、約4000トン・キロメートルである。これは1人当たりの食料輸入量が約 420キログラムであることを考えると、平均輸送距離は10,000キロメートル弱にもなる。直線距離で、ほぼ東京から米国のシカゴまでの距離に相当 するというから驚きだ。グローバル経済の潮流は、世界の物資と人びとを猛烈な勢いで移動させている。それが、いずれ化石燃料の枯渇と地球温暖化の進行というツケとなって跳ね返ってくることを忘れてはならない。日本の二酸化炭素排出量にしても、輸送部門の増大には歯止めがかからないでいる。評論家の内橋克人氏は、 F(フード=食料)、E(エネルギー)、C(ケア=相互扶助)の3つの切り口から、21世紀はとくに地域の自立が求められると説いている。エンジニアリングの 基本発想も、このあたりから見直されるべきとこが、どうやらハッキリしてきたといえるだろう。

各国のフード・マイレージの比較

国名/フード・マイレージ総量/人口1人当たり
日本/約5000億/約4000
韓国/約1500億/約3200
米国/約1400億/約500 
(出所:中田哲也『「フード・マイレージ」の試算について』 農林水産政策研究所レビューNo.2、2001年12月)

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