PFIが創る環境事業官民協働の地域インフラ:バイオエネルギー
(10)精肉残さ処理にDBO方式
出典:日本工業新聞 2002年8月28日
農村地域の活性化を行うキーワードは、「環境」だ。環境事業が軌道に乗れば、農村地域の廃棄物問題を解決するだけでなく、新たな地域産業を創出することができる。また、環境事業の拡大は、農業人口の現象を食い止め、増加のきっかけとなる可能性をもつ。
いま農村地域が抱える環境問題は畜産廃棄物の処理、とりわけ肉骨粉の適正処理が求められている。肉骨粉の適正処理は、肉骨粉に加工する前に食肉として用いられた精肉の残さを死亡牛などと分けて、家畜ふん尿と合わせたバイオガス化する方法が適している。精肉残さを加工した肉骨粉は家畜ふん尿と同様に、これまで有効利用されていたものであり、産廃市場から調達される廃棄物ではない。
民間にも利益
前回も示したように、BOT(建設・運営・譲渡)もしくはBTO(建設・譲渡・所有)を行う場合は、産廃市場から受け入れて高価な処理委託費を確保すれば事業メリットが生じる。しかし、肉骨粉と家畜ふん尿の統合処理事業は、高価な委託費の確保が難しい。このため、公共関与で行うとともに、できるだけ処理コストが低い方法を選定する必要がある。具体的には、事業の効率化とコストダウンが図れるDBO(設計・建設・運営)が適している。
また、民間事業者にとっても、精肉残さの処理は、バイオガスがより多く発生し電力販売収入の増加につながるため、有望な事業である。従って、DBO方式は、精肉残さの適正処理の点で、農村地域の環境・廃棄物問題を解決する有効手段となる。
自治体主導で
このような新事業を創出するには、いくつかの条件がある。
1つ目は地域の自治体の理解。現在、各自治体は農村地域の環境・廃棄物問題の解決方法に苦慮してはいるものの、この分野が民間の事業領域であるため、公共関与に踏み出せないのが現状だ。かといって、環境対策の負担が増加することによる地場産業の弱体化は避けたいところだろう。これまで述べてきたように、地方における産業の弱体化は深刻であり、放置して置け不法投棄の増加を招く恐れもある。そこで、畜排せつ物法による畜産関係者への制限が厳しくなる前に自治体の主導で対策を講じる必要がある。
2つ目は、農家や農協など地域の関係者の理解。環境事業の展開は農家に新たな可能性を切り開く。例えば、菜の花などのエネルギー作物と呼ばれる農産物の普及だ。新たな農業生産物を育成し、農業廃棄物の有効利用を展開するには、農業人口の増加が必要となる。人材確保に向けて、農家の遊休資産の貸与、農協での技術指導や必要な装備の安価な貸し出しなど、受け入れ態勢の整備が必要である。
バイオエネルギーのPFI事業ついて10回にわたって述べてきた。家畜排せつ物法などの法制度整備や新エネ法など法制度の整備や、京都議定書の批准等によって、いま、有機性廃棄物の適正処理と有効利用が新たな局面を迎えている。これを機に、PFI事業がこの分野で本格化することを期待したい。