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PFIが創る環境事業官民協働の地域インフラ:バイオエネルギー 
(8)年間通した調達計画必要

出典:日本工業新聞 2002年8月22日

広域処理が可能

農村地域の環境問題の解決を図るためには、農家が自力で対応できない問題への公共関与を行うことが必要になる。農業などの産業保護は、国策として重要だが、必要以上の保護は産業の自立的な発展を妨げる。そこで対策として最も注目されているのは、公共事業の中に民間の資金や、経営手法を取り入れる手法だ。代表的なのが、PFIである。この手法を活用すれば、農村地域の環境事業の効率的経営が可能となる。
では、畜産廃棄物の適正処理事業にPFIを導入すると、どんなメリットが得られるのか。現在の代表的なPFI事業である一般廃棄物の焼却施設と比較しながら考察してみたい。
焼却施設では、地域で排出される一般廃棄物を確実に処理しなければならないため、ほかの産業廃棄物処理を含めた事業は積極的には行われていない。これに対し、畜産廃棄物処理事業は、農村地域で発生する有機系廃棄物全般の処理を想定している。この事業は国庫補助事業とすることが可能で、補助の条件は家畜ふん尿処理が主体となる。ほかの農村地域の有機系廃棄物の適正処理も積極的に行うことができる。このように、畜産廃棄物の適正処理施設は焼却施設と異なり、さまざまな民間の創意工夫を取り入れる余地がある。以下に、具体案を示す。

産廃も同時処理

「1.エネルギー販売収入の増大」
畜産は廃棄物処理施設は、農村地域のバイオマスの適正処理とエネルギー利用を目的としているため、できるだけ発電効率を上げる必要がある。家畜ふん尿だけでは、電気は施設の必要量を賄う程度しか得られない。これに対し、前回までに示したように、精肉残さや野菜くず、菜種油の絞りかすなどのバイオマスの中には、家畜のふん尿の数倍から10倍以上の電力を発生することが可能なものがある。これらのバイオマスを積極的に活用するためには、それらの生成時期を考慮した上で、年間を通した調達計画を立てる必要がある。このような決め細かい事業を行うためには、電力の販売による収入をインセンティブとした民間事業の経営手法の導入が欠かせない。

「2.産業廃棄物処理委託費の確保」
周辺地域から排出される産業廃棄物の受入れによって、産業廃棄物処理収入を確保できる。有機系の産業廃棄物は焼却するよりも発酵処理を行った方が低コストで処理できる。その結果、これまで産廃として焼却されている有機系廃棄物が畜産廃棄物処理施設に流入してくる可能性が高い。また、今後、一般廃棄物と産業廃棄物の境界が見直される可能性が大いにある。もしそうなれば、これまで一般廃棄物として焼却処理されてきた飲食店やスーパーなどの生ごみは、産業廃棄物として処理されることになるかもしれない。それに伴い、バイオマスの量が増加するだろう。畜産廃棄物処理事業は、民間の調達力によってこれらの産業廃棄物の処理委託収入増加が期待できる。
バイオマス処理事業は、これらの民間の経営手法によって収益を増大させることが可能である。しかし、現段階ではこれらの廃棄物の処理ルートが確保されていない。確保しやすい地域、確保しにくい地域があることも想定される。今後、処理ルートを積極的に確保して、事業の改善を図っていく必要がある。

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