PFIが創る環境事業官民協働の地域インフラ:バイオエネルギー
(7)農家の事業構造改革を
出典:日本工業新聞 2002年8月21日
厳しい経営状況
日本のバイオマス政策は今の方針で順調に進むのであろうか。バイオマスが廃棄物対策や地球温暖化問題の改善への決め手として重要視されてきたのは確かだ。普及推進を目的に、家畜排せつ物法、食品リサイクル法、新エネ法など、様々な法整備も進んでいる。生物由来の循環資源であるバイオマスの有効利用を図る上で重要な役割を担うのは農村地域だ。一連の法整備が、農村地域でバイオマスの資源化を推進する仕組みになっているか、問われることころだ。
特に家畜排せつ物法は、これまで農家が自家処理してきた畜産廃棄物を資源化の対象にすることで、排出者責任として各農家に対して排出責任者としての負荷を課すことにもつながる。通常の農家は、この事態に急には対応できないであろう。その理由は、農家の設備投資などに対する新たなコスト負担力が低いからだ。また、今後も、コスト負担を求めることが難しいと推察される。図に農家の年齢分布を示す。このとおり、34%が65歳以上であり、農村地域を取り巻く現状をみれば、先行きにあまり希望を抱けないのが実情だ。このため、新たな設備投資をしてまで畜産を続ける農家がどれだけあるか疑問が生じる。加えて、酪農家は、牛乳の価格下落によって厳しい状況に置かれている。乳牛1頭当りの年間の収入が20~30万円という酪農家に対し、家畜ふん尿の処理費用を通常の産業廃棄物と同レベルに設定することは難しい。通常の産廃処理費用を2万円とすると、乳牛1頭当りの家畜ふん尿処理費用は年間50万円程度となる。このため、産廃処理費用を10分の1以下に軽減しなければ酪農家は対応できない。
公共支援で打開
現在まで、畜産業の実態で厳しい規制を課せば、畜産業就労者は事業継続を断念せざるを得ない状況に追い込まれてしまう。そのような事態にならないような施策を講じる必要がある。一方で、前回までに示してきたとおり、畜産廃棄物による環境問題は放置できず、早急な対応が迫られている。最も現実的な方法は、公共による全面的支援である。ただし、恒久的な対策であってはならない。特定の産業に対して全面的な支援を継続することは、産業の弱体化を助長し、新たな問題を発生させる原因となるからだ。
このように、早急な環境対策を打つと同時に、農村地域の事業構造の改革を行なって、1日も早く健全な状態に立て直す必要がある。では、抜本的な改善に適した事業方法にはどのようなものがあるのか。1つの方法として、公共だけで対策を講じるのではなく、官民協働の事業によって対応する方法がある。これがPFIに代表される事業方式だ。この方式では、公共事業の安定性と、民間事業の効率性を合わせ持つ。また、事業構造の改革を推進し、公共財政負担を極力減らしていくことも可能となる。農村地域の環境改善とバイオマス資源の有効利用促進し、農村地域における産業構造の改革の図るには、PFI方式の活用が有効である。