PFIが創る環境事業官民協働の地域インフラ:バイオエネルギー
(6)一石二鳥の生ごみ資源化
出典:日本工業新聞 2002年8月20日
焼却はマイナス
バイオエネルギーの利用は、新エネルギーの容量を拡大させるだけでなく、廃棄物対策としても有効な方法となる。特にわれわれの身近な廃棄物である生ごみは、資源有効活用と適正処理の一石二鳥の効果が得られる。生ごみは、年間約2,000万トン発生し、一般廃棄物の約40%を占める。廃棄物の減量化を進めるうえで、大きな課題となっている。
近年、生ごみの適正処理を推進するために、全国の自治体で分別収集が盛んに行なわれるようになってきた。また、食品リサイクル法が昨年5月に施工され、事業者が排出する生ごみの再資源化活動も活発化している。同法は、ホテルやレストランなどの食品関連事業者が排出する生ごみを対象とする。特に、年間に100トン(日量で約300kg)以上の食品廃棄物を排出する約16,000の食品関連事業者には、20%を減量化・リサイクルすることが義務付けられ、罰則規定も設置されている。事業系の生ごみは年間で約940万トンに上る。
同法による減量効果に期待がかかる。これまで、生ごみはほとんどが焼却処理されてきた。生ごみの成分は8割近くが水分であるため、ごみ焼却炉での燃焼温度の低下を引き起こし、ダイオキシン発生の原因の1つとなる。また、廃棄物発電としてごみ焼却炉の排熱を有効利用する際にも、発電量を低下させてマイナス要因となる。このため、生ごみは焼却処理せず、分別して再資源化を行なうことが望ましい。
では、生ごみの理想的な処理はどうあるべきか。悪臭の発生を防ぐために乾燥してから処理する方法があるが、これはエネルギーフローの大きなロスを招く。従って、湿った状態で処理するのが望ましい。例えば、廃棄物として処理する施設としては、し尿や浄化槽汚泥と併せて処理する「汚泥再生処理センター」がある。この施設では、メタン発酵によってメタンガスを生成する。従来の汚泥だけではガスの生成率は低かったが、生ごみの投入によってメタンガス生成効率が向上する。当然ながら、生ごみの資源としての有効利用も進む。同様の発想で、生ごみと家畜ふん尿と併せて処理する施設がある。これはバイオガス施設と呼ばれており、農家から排出されるふん尿と生ごみなどを併せて処理する施設である。これらのメタン発酵施設を活用すれば、生ごみの効率的な資源化が可能になる。
分別精度向上を
自治体の焼却炉で生ごみ処理を行なう場合、1トンあたり2万5,000円程度の費用がかかるといわれる。これに対し、バイオガス施設で処理する場合は、1トン当り数千円程度で処理できる。このように、バイオガス施設で生ごみを処理すれば、新たなエネルギーを確保できるとともに、廃棄物処理にかかる自治体の財政支出を低減することも可能だ。
バイオガス施設や汚泥再生処理センターの効率的運営を行なうためには、十分な生ごみを確保して、メタンガス生成による資源化を推進する必要がある。そのためにはも、食品リサイクル法の適正な運用と、生ごみ分別の精度向上を担う自治体の役割は大きい。