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介護保険法改正で民間のサービスへの期待が拡大する

2014年06月17日 齊木大


 これからは高齢者の中でも75歳以上の割合が大きくなり、筆者らが「ギャップシニア」と呼ぶ、必ずしも元気ではないが要介護でもない状態の高齢者が増加する。今後のシニア市場で着目すべき存在だ。ギャップシニアを二次予防対象者及び要支援高齢者と捉えると、全高齢者の約4割を占め、推計1,000万人を超えると見られる。
 ただし、潜在市場としての規模は大きくても、商品・サービスの選択肢が少ないために消費に結びついていない。これはギャップシニアの人数の分布や日常生活上の課題を自治体が把握しているのみで、民間企業はこれらの情報を把握しにくいためだ。要介護者が集まっている介護施設のように、ギャップシニアが集まっている場所がないことも、ニーズ把握が難しい一因である。また、ギャップシニア自身が「我慢」や「諦め」によって自らのニーズを封じ込めやすいことも課題だ。

 今国会で審議中の介護保険法改正が施行されると、自治体への権限委譲が進み、自治体がギャップシニアを対象とするプログラムを新たに考えたりより効果的なものを重点的に実施したりしやすくなる。例えば運動機能低下のリスクがある高齢者の多くがフィットネスクラブの提供する体操プログラムを利用できるのであれば、自治体の予算を口腔機能低下のリスクに対するプログラムに重点化するといったことが考えられる。
  しかし、財政的・人的資源の制約から手が回っていないのが多くの自治体の実情であり、要介護者に比べて比較的元気なギャップシニア向けは自治体の事業ではなく、民間企業に委託したり、そのプログラムを紹介したりすることになると考えられる。民間企業から見れば官民協働の手法を採ることにより、利用者を獲得しやすくなる。

 協働を推進するエンジンとして、筆者らは官民協働型のプラットフォームの創設を提案している。具体的には、行政が把握しているギャップシニアの人数の分布や日常生活上の課題のデータをもとに企業が開発した商品・サービスを、自治体や介護予防事業者等を介してデリバリーし、商品・サービスの検証・評価までを行うプラットフォームだ。民間企業にとっては利用者の獲得がしやすくなるとともに、自治体にとっては民間の商品・サービスを調達しやすくなり将来的な給付抑制が、市民にとっては商品・サービスの選択肢の拡大と将来的な介護保険料の低減が期待できる。


※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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