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「寄付」から始まる社会との対話
―SAKI寄付教育プログラム実施報告(法政大学)

2026年02月06日 五十嵐琉偉、橋爪麻紀子瀬名波雅子南かのん


 株式会社日本総合研究所(以下、日本総研)は、2025年の夏から冬にかけて、三井住友ファイナンス&リース株式会社(以下、SMFL)の協力のもと、法政大学現代福祉学部福祉コミュニティ学科土肥ゼミの2~3年生を対象に「SAKI寄付教育プログラム」を実施しました。本プログラムは、寄付という社会参加の体験を通じて、学生が社会課題に主体的に向き合う力を育むことを目的としています。以下では、法政大学の学生による実践の様子やプログラムを通して得られた学びを時系列でご紹介します。

「寄付とは何か」イントロダクション(25年7月)
 最初のステップとして、日本総研より「寄付とは何か」をテーマにした授業がオンラインで実施されました。授業では、身近な寄付の事例を取り上げながら、寄付の定義や役割について考える時間が設けられました。学生からは、「寄付は特別な人がするものではなく、誰もが関われる社会参加の方法である」という視点に対して多くの質問が寄せられ、活発な議論が展開されました。授業の最後には、10月の発表までに「自分が寄付したいと思う団体を調べてくる」という課題が出され、学生はそれぞれの関心に基づいて寄付先候補を探し始めました。

「寄付者の想いを知る」セッション(25年7月)
 続いて、寄付原資を提供するSMFL(※1)の担当者とのオンラインセッションが行われました。学生はSMFLの担当者に対して「なぜこのような寄付型事業を始めたのか」「企業としてどのような社会課題に関心があるのか」など、寄付者の意向を深く理解するための質問を積極的に投げかけました。このセッションを通じて、学生は寄付者の視点を知るとともに、寄付先を選定する際に寄付者の価値観を尊重することの重要性を学びました。

ゼミ合宿で寄付先を選定・プレゼン準備(25年9月)
 夏休み期間中、土肥ゼミの合宿が開催されました。この合宿期間を活用し、学生は5つのチームに分かれて、それぞれが寄付先として最も適切だと考える団体の選定に取り組みました。今回のプログラムでは、SMFLから提示された5つの寄付先候補(※2)に加え、チームごとに「他に候補となり得るのではないか」と考える団体についても検討が行われました。合宿中にはゼミの4年生からの厳しくも温かいフィードバックがあり、各チームは寄付先の選定理由をより深く掘り下げることできました。社会課題の背景、団体の活動内容、寄付によるインパクトなど、多角的な視点から寄付先を検討することができたそうです。

「寄付先を決定する」プレゼンテーション(25年10月)
 日本総研の社会価値共創スタジオにおいて、寄付先のプレゼンテーションが行われました。各チームはSMFLの担当者を寄付者として迎え、「なぜこの団体に寄付すべきなのか」をテーマに発表を行いました。今回印象的だったのは、寄付先を決定するまでのプロセスがチームによって様々であった点です。自らの被災体験を起点に寄付先を選んだチーム、団体の活動実績や資金使途の透明性を重視したチーム、30万円という寄付額でどれほど大きな社会的インパクトを生み出すことができるかを軸に検討したチームなど、アプローチの多様性が際立つ発表となりました。そして興味深いことに、寄付先の決定プロセスは異なるものの、5チーム中4チームが認定特定非営利活動法人キッズドアを選定しました。教育支援や子どもの貧困といった社会課題に対する関心の高さは、現代福祉学部の学生らしさを象徴する結果でもあるといえます。一方、残る1チームは「社会的関心が相対的に低く、寄付を集めにくい領域こそ支援の必要性が高いのではないか」という観点から、公益財団法人日本補助犬協会を選定しました。
 
 プレゼンテーションでは、「なぜ日本では寄付が浸透しないのか」「どのようにすれば寄付が日常化するのか」といった寄付の本質に迫る問いに向き合うチームが多かった他、寄付者の想いとの接点を工夫した構成も目立ちました。全体として非常に示唆に富んだ内容となっており、SMFLや日本総研の社員からも高い評価が寄せられました。
 最終的な寄付先はゼミ全体の投票によって決定されました。結果として選ばれたのは、公益財団法人日本補助犬協会を選定したチームでした。他のチームがいずれも同一の団体を選定する中で、あえて社会的な注目が十分に及んでいない領域に目を向け、そのような資源が行き届きにくい分野へ意識的に支援を配分する意義を明確に提示した点が、同チームの大きな特徴でした。この視点の提示はその場の全員に強い意外性をもって受け止められ、寄付の在り方をあらためて問い直すきっかけとなりました。こうした一貫した主張が寄付の本質への理解を深める内容として高く評価され、「光の当たりにくい領域にこそ支援の価値がある」というメッセージに多くの共感が寄せられた結果、同チームが支持を獲得したと考えられます。



「寄付金は何に使われるのか」寄付先訪問(25年12月)
 寄付先が決定した後、12月には法政大学の学生、寄付者であるSMFLの担当者、日本総研の関係者が一堂に会し、横浜市戸塚区にある公益財団法人日本補助犬協会の訓練センターを訪問しました。
 現地では、協会職員の方から、補助犬の一生や育成プロセス、寄付の受け入れ状況とその使途、協会の活動実績などについて丁寧な解説をいただきました。特に、団体ごとに育成方針が異なるため横の連携が少なく、啓発活動が十分に進まない現状や、訓練士が24時間体制で補助犬の世話を行うことによる負担の大きさ、それゆえに若い担い手の確保が難しい実態など、インターネットの情報だけでは掴みきれない現場の実情に触れることができたことは、学生にとって貴重な機会となりました。
 また、盲導犬との歩行体験も行われました。学生は目を閉じて盲導犬のペースに身を委ねて歩くなかで、平衡感覚が揺らぎ、自分の位置が分からなくなる不安や恐怖を体感しました。こうした体験を通して、学生は障害のある方々が安心して生活できるような社会をデザインすることの重要性や、その中で補助犬が果たす役割の大きさを自分事としてより深く理解することができました。




おわりに
 今回のSAKI寄付教育プログラムの実践を通じて、学生は「寄付とは何か」「社会課題にどう向き合うか」「寄付者の想いをどう受け止めるか」といった多くの問いに向き合いました。正解がない中で実際に寄付先を選び、寄付者と対話し、現場を訪問するという一連のプロセスの中で、単なる知識の習得にとどまらない様々な学びを得ることができたことでしょう。

 学生からは次のような感想が寄せられました。
・「寄付は他人事と感じていたものが、自分の少しの力でも誰かのためになるという素晴らしい行動であるということを学びました。」
・「自分の興味のある団体に少額でも寄付をすることで、寄付の循環が広がりもっと日本も良くなるのではないかと思いました。」
・「寄付した団体が社会にどんな影響を及ぼす可能性があるのかにも目を向けると、寄付という小さな行為を通じて自分も社会の一員になれると思うことができると思いました。」
・「人の数だけ熱意があって、経緯は違ったとしても自分の中の問題と如何にその課題を結びつけていくか次第で寄付文化はまだいくらでも良い方向に変わっていくのではないかと思えました。」

 こうしたコメントからは、学生が寄付を「単なる支援行為」としてではなく、社会とのつながりを実感し、自らの価値観や想いを表現する行為として捉えられるようになったことがうかがえます。また、寄付の持つ可能性を自分事として受け止め、社会への主体的な関わり方について思考を深めている点も印象的です。
 本プログラムを通じて、寄付という行為が自らの意思を社会に届ける一つの手段であること、そして誰もが小さな一歩から主体的な社会参加を実現できることを、学生は実体験を通して理解したと言えます。

 今後も私たちは、このような実践的な寄付教育のさらなる普及を通じて、若い世代が社会と主体的に関わるきっかけを生み出せるよう、全国でプログラムを展開していきます。


【参考情報】
・SAKI寄付教育プログラムの概要に関してはこちらをご参照ください。
 SDGsリース「みらい2030®」(寄付型)と連携した新しいお金の教育「SAKI寄付教育プログラム」の提供について

・SAKI寄付教育プログラムでは受講者側のニーズに合わせて講座の構成をアレンジすることが可能です。
 昨年度は茨城大学の学生を対象に半日のプログラムを実施しました。講座の様子はこちらの動画をご覧ください。
 寄付から学ぶ社会のためのお金の使い方(YouTube)

・日本総研では寄付に関する情報発信にも取り組んでいます。
 どこに寄付をするかを考えることは、自分と向き合うこと(YouTube)


(※1) 本プログラムは、SMFLが提供するSDGsリース「みらい2030®」(寄付型)のリース契約料の一部をSMFLが公益財団法人や認定NPO法人などに寄付する仕組みを寄付原資としています。
(※2) 認定特定非営利活動法人ウォーターエイドジャパン、認定特定非営利活動法人キッズドア、認定NPO法人難病のこども支援全国ネットワーク、公益財団法人日本補助犬協会、一般社団法人more trees


<本件に関するお問い合わせ先>
株式会社日本総合研究所 創発戦略センター 事務局
Email:igarashi.ryuiatjri.co.jp
 (メール送付の際はatを@と書き換えての発信をお願い致します)


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。

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