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【コーポレート・ガバナンス改革の展望】
進化するコーポレート・ガバナンス ~連載開始にあたって~

2021年01月12日 山田英司


 コーポレート・ガバナンスは「古くて新しい」経営課題である。2000年代初頭から主に守りのガバナンスの観点から議論がなされていたが、2015年のコーポレートガバナンス・コード(CGC)を起点に、独立社外取締役の任用など、上場企業を中心にした制度対応が進むようになってきた。その後も伊藤レポートや、CGS研究会による様々な実務指針が提示されるなど、「形式から実質」を目指した動きが加速している。
 日本におけるコーポレート・ガバナンスの基本概念は、OECD原則に立ちつつ、日本の株式市場に一定の影響力を有する米国、英国の影響を受けたモニタリングモデルを原則としている。一方で、伊藤レポートにおけるROE水準に関する問題提起や、グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針における「資本コストを意識した事業ポートフォリオマネジメント」などへの言及にみられるように、日本国内の経済政策を反映し、企業に積極的な投資を促す「攻め」のガバナンスを重視していることにも特徴がある。
 さらに2020年に入り、コーポレート・ガバナンス改革が加速する。その背景としては、企業経営において一層のサステナビリティ要素が求められる傾向にあること、および2022年4月(基準日:2021年6月)に新市場に移行が予定されている東証の市場改革において、プライム市場を目指す企業に対しては「より高度のガバナンス水準」が求められていることが挙げられる。


 このような連続的な変化にあるコーポレート・ガバナンス改革に企業はどのように向かい合うべきかについて、本連載では論じていく。
 まず、次回(第1回)では、多くの上場企業において注目の高い東証市場再編とコーポレートガバナンス・コードの改訂について解説する。そして、第2回から第5回では、特にモニタリングモデルへの移行を前提とした際の取締役会の在り方や、取締役の役割と要件について米国、英国との比較も含めて整理し、第6回から第8回では、近年のESGなどのサステナビリティ重視の中で、これらの要素をどのように取り込んでいくか、またガバナンスの根幹である取締役会をどのように持続させるかについて考察を行う。さらに、第9回と第10回では、日本企業のコーポレート・ガバナンス対応において、近年の重要なトピックスである、「稼ぐ力」の強化と、グループ・ガバナンスについての重要ポイントを整理する。
 これらの整理と考察を踏まえて、最終回である第11回では日本企業がコーポレート・ガバナンス改革を進める上での展望と今後の課題をまとめる予定である。

 東証の市場再編を控え、コーポレートガバナンス・コードのフォローアップが現在も行われていることもあり、日本型コーポレート・ガバナンスはさらなる進化と深化が予想される。本連載では、日本企業の実態に即しつつ、社会的価値と企業価値の向上に資する、現実的なコーポレート・カバナンス改革の一助となるよう、最新の情報を取り込んでいく予定である。

今後の掲載予定
第1回 東証市場改革とコーポレートガバナンス・コード改訂のインパクト
第2回 求められる取締役会の機能強化 ~モニタリングモデルへのシフト~
第3回 変化する社外取締役の役割① ~日米英のスキル分析からの示唆
第4回 変化する社外取締役の役割② ~誰が社外取締役を選任するのか~
第5回 ガバナンス視点からの報酬マネジメント
第6回 コーポレート・ガバナンスに求められる2つのサステナビリティ① ~サステナビリティ要素をどのように反映させるか~
第7回 コーポレート・ガバナンスに求められる2つのサステナビリティ② ~持続的にガバナンスを機能させるためのボード・サクセッション~
第8回 「ボード・サクセッション」推進の重要ポイント
第9回 「稼ぐ力」の強化 ~資本コストをめぐる議論~
第10回 複雑化するグループ・ガバナンス
第11回 日本企業におけるコーポレート・ガバナンス改革の展望と課題


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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