JRI Future Signal #2:見た目も振る舞いも理想のチャットパートナー
(背景)
TwitterやLINEを始めとするSNSがコミュニケーションツールとして用いられるようになって久しい。これらのSNSにはボットと呼ばれるアプリケーションを用いたアカウントが存在する。ボットには時報を教えてくれるだけの単純なものから、機械学習させた「りんなちゃん」や「大喜利人工知能」のような人間らしい回答が出来るチャットボットまで多種多様だ。
近年、機械学習の発展によってこうした人間のような振る舞いの出来るチャットボットが増加しているが、このチャットボットの代表格が、iPhoneのiOSに標準搭載されている「Siri」だろう。Siriは簡単な受け答えや検索を越えて、自ら学習することで雑談などのコミュニケーションも少しずつではあるが行われるようになってきた。
さらに、チャットボットだけでなく、ビジュアル面でも「人間らしさ」の研究が進んでいる。
たとえば、Rosebud AIが2019年に公開したツールは、従来のものよりもカスタマイズ性を飛躍的に高めており、マネキンに衣装を着せた写真をアップロードすれば、実在しないモデルがそれを着た写真を生成できる。
近年は、人工知能技術を使って実在しない人物の写真を生成するツールも公開されてきた。本物と見分けがつかないような、驚くほど自然な出来栄えに仕上がっている。この技術を駆使することで、さながら寸分の狂いなく好みのパートナーを作ることも出来そうだ。
(変化の概要)
これまでは、自分の行きたい場所や知りたい天気のような用件事はチャットボットが代替し、知りたいことは検索エンジンで自ら探し出していた。そこでは、人とボットとの関係性は無機質で、各目的に特化した単なる「操作」を伴った。
しかし、Siriのような、コミュニケーション型のチャットボットの発展が進み、Rosebud AIのツールのような理想の見た目が実現することで、個々人に適したバーチャルのアンドロイドを創り出すことが可能になる。
バーチャルのアンドロイドが普及した世界では、誰しもがさながら理想の容姿で理想の振る舞いをするチャットパートナーを持っている。スマートフォンでZoomやLINEをする感覚で、聞きたいことや雑談、相談事にも乗ってくれる。
このチャットパートナーは、見た目をそのままに振る舞いをカスタマイズする、もしくは振る舞いをそのままに時々によって見た目をカスタマイズするという使い方も考えられるだろう。使う人によっては、複数のチャットパートナーを気分や用途に応じて使い分けることもあり得るだろう。
(変化後の社会)
コロナ禍でオンラインでの仕事や飲み会が増加する昨今、対面で顔を合わせたことのない人とのコミュニケーション機会が増えることを想定すると、「リアルの人」と「バーチャルのアンドロイド」の区別が付かなくなることは想像に難くないのではなかろうか。
リアルな人とはコミュニケーションを全くとらず、恋人も友人も全てチャットパートナーにのみ囲まれて生きるような人も出てくるかもしれない(その人にとっては、アンドロイドのチャットパートナーの方が人間らしいと考えており、この方が幸福なのだ)。
背景となる未来の兆し
寸分の狂いなく好みのパートナーを作る
実在しない人物の写真を高精度で作るAI技術を使ったソフトが公開された。
他の技術と組み合わせれば、自分の理想と寸分狂わぬアンドロイドを作ることができるだろう。
リアルな恋愛はさらに遠くなり少子化が加速。代わりに乱発された野良アンドロイドであふれるが、自分でも作れるからドラマのような拾い手はいない。
[出所]https://www.fashionsnap.com/article/2020-07-21/rosebud-ai/
関連リンク:
◆スペシャルウェブサイト:デジタル社会の未来シナリオ