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「兼業・副業の緩和」が「女性活躍」をひらく

2016年3月23日 足達英一郎


 3月11日に開催された経済財政諮問会議で、民間議員から「兼業・副業の促進」の提言がなされたことに注目した。中小企業庁が一昨年に行った「兼業・副業に係る取組み実態調査」(地域・業種・規模に偏りなく抽出した4,513社が対象)によれば、兼業・副業を認める制度があると答えた企業は14.7%。兼業・副業を推進する企業はゼロであったという。

 この提言では「キャリアの複線化、能力・スキルを有する企業人材の活躍の場の拡大や大企業人材の中小企業・地域企業での就業促進などの観点から、積極的に兼業・副業を促進してはどうか」、「その際、兼業・副業の場合における総労働時間の把握や雇用保険の適用関係など、兼業・副業に必要な環境整備について検討し、ガイドライン等を示すべき」とうたっている。

 さて、この提言自体は、「生産性の高い働き方の実現」というマクロ経済的な効果を狙って導き出されたものであるが、当社では、かねて「女性活躍の推進を阻むもの」のひとつとして「企業における兼業・副業の禁止」があると考えてきた。そのロジックはこうである。

 焦点は特に大企業に多い、昇給・昇格の可能性がほとんどなくなったシニア層にある。企業の雇用確保措置が65歳まで義務化されたといっても、組織のヒエラルキー構造が変わらなければ、いわゆる役職定年制(役職段階別に管理職がラインから外れて専門職などで処遇される制度)対象者や部下なし管理職の数だけが増えていってしまう。こうしたシニア層の心情は複雑である。「まだまだこれから頑張れるのに……、転職してセカンドキャリアを見つけたい」という気持ちと、「子供の教育費や住宅ローンの負担はまだ続く……、ここでリスクは取れない」という気持ちとの間で揺れ動く。予備軍となる男性管理職も先輩の姿を将来の自分に重ねている。そこに、この数年の「女性役員、女性管理職の拡大」の大号令なのである。

 こうした状況の中で、シニア層が女性活躍推進を無意識に脅威だと感じるのは、無理からぬことだ。職場のこうした雰囲気は、簡単に女性従業員にも伝わる。女性側は「軋轢を引き起こしてまで、管理職にはなりたくない」と尻込みしてしまう。そこで、「企業における兼業・副業」を緩和して、セカンドキャリアの助走期間や他社では評価されるかのテスト期間を授けることで、シニア層の自信が形成されれば、ポスト明け渡しによる管理職者の新陳代謝は少しでも前に進むと確信するのである。果たして、このロジックは飛び過ぎであろうか。                                                   

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