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「適切なケアマネジメント手法」に関するよくある質問と回答



 適切なケアマネジメント手法」に関して、よくある質問と回答をまとめました。

■「適切なケアマネジメント手法」の考え方について


(問1)従来のケアマネジメントプロセスと考え方が変わるのか。 
(回答)
 「適切なケアマネジメント手法」は、情報収集前の仮説として“あたり”をつける段階の知識を体系化したものである。従来のケアマネジメントプロセスの実務でも、ご利用者の基本的な概況をつかんだうえで“あたりをつけて”情報収集に着手しているため、従来のケアマネジメントプロセスと本手法は相反するものではない。
 なお、仮説を持って情報収集する考え方では、ケアに関わる各専門職の領域で蓄積された根拠のある知識を持つことが重要である。本手法は、例えば初認段階のケアマネジャーでも適切な仮説を考えられるよう、高齢者の機能と生理をはじめ、各領域で確立された要介護高齢者の介護に関する知識を体系化した。本手法で示す「想定される支援内容」について仮説を持ち、仮説検証の形でニーズの分析・検討を行うことは、初任者にとっても取り組みやすいと考えている。ただし、ここで「想定される支援内容」とは、あくまで仮説であり、この支援(サービス)の導入ありきで情報収集を行うものではないことには注意が必要である。

(問2)多職種との「共通言語」として活用するとあるが、具体的にはどういうことか。 
(回答)
 本手法をカンファレンスで活用する場合を例とすると、疾患を持った方が退院される際に、疾患に応じて特に留意すべき支援の必要性を検討しやすくなる。つまり、どのような支援内容が、なぜ検討する可能性があるのか、またその必要性を検討するにはどのような情報を収集し検討すればよいのかを、ケアマネジャーと他の職種との間で具体的に共有できるようになる。このように、支援内容を検討する前提となる知識を共有できることを以て「共通言語」と表現している。
 多職種との連携については、以下の調査研究報告書などをご参考されたい。
適切なケアマネジメント手法の策定や多職種協働マネジメントの展開に向けた実証的な調査研究事業

■「適切なケアマネジメント手法」の活用場面・実務について


(問3)「適切なケアマネジメント手法」は、どのような場面で活用できるのか。
(回答)
 「適切なケアマネジメント手法の手引き」では、4つの場面をご紹介している。
①ケアマネジャーがアセスメント・モニタリングやケアプラン原案の作成に活用する。
②指導担当者が事業所内や同行訪問での指導に活用する。
③地域包括支援センターや職能団体が相談支援や研修、地域包括ケア会議に活用する。
④保険者が多職種連携やケアマネジメント支援の仕組みの整備に向けた検討に活用する。
 これをケアマネジメントプロセスに沿って言い換えると、アセスメントにおける情報収集を始める前に仮説を持つ段階で活用できるほか、抽出した課題に基づいて支援内容を具体化・個別化していく段階でも活用できる。
 上記4つのいずれの場面の活用でも、どちらの段階で活用するのかを意識すると、より使いやすいと考える。

(問4)新人への指導に活用する際、どこを掘り下げて使えばよいか。
(回答)
 想定される支援内容ごとに情報収集の実施状況や支援の検討状況を点検し、抜け漏れていた点に着目して指導助言するような活用法を検討するとよい。情報の収集・整理・分析と課題抽出を苦手とする初任者にとっては、まず自身の視点の「抜け・漏れ」を知ることで、指導助言の効果を高めることができる。
 なお、点検のツールとして、日本総研が「自己点検シート」を整備しているのでご活用いただきたい。
「適切なケアマネジメント手法」自己点検シート案(基本ケア)(Excel)

(問5)項目一覧にある項目の数が多く負担を感じており、ご利用者本人や家族にとっても負担が大きいと思われる。全部の項目に取り組まなくてはならないのか。
(回答)
 本手法は、多職種が連携する場面で具体的に情報共有しやすいよう、詳細な情報項目(アセスメント項目、モニタリング項目)を示しているため、項目数が多くなっている。しかし、これらの情報を一時期にすべて網羅して情報収集することを求めるものではない。本手法で重視するのは、視点の「抜け・漏れ」を無くすことであるから、まずは自己点検を通じて収集していなかった情報に気づき、その中から、優先すべきと考える項目を選んで、追加の情報収集を実施するなどしていただきたい。
 なお、令和3年度の「適切なケアマネジメント手法 実践研修」では、3~5つの項目を選定して情報の深掘りや支援内容の再検討などに取り組むケアマネジャーが多かったことから、これを参考に、項目を絞って情報の収集と多職種間での共有に活用いただきたい。

(問6)「基本ケア」に加えて「疾患別ケア」があり、どれから取り組めばよいか迷う。取り組む内容をどのように見極めるとよいか。
(回答)
 本手法では「基本ケア」を「生活の基盤を整えるための基礎的な視点であり、利用者に疾患等がない場合でも、また疾患が複数ある場合でも共通するもの」としている。つまり、まずは「基本ケア」に示す視点の抜け漏れがないかの確認から取り組んでいただきたい。
 そのうえで、例えば退院直後であったり病状の変化があったりして医療との関わりが大きい状況にある方については、「疾患別ケア」に示す視点を活用し、医療職と連携して疾患に応じて特に留意すべき支援内容を検討していただきたい。

(問7)「適切なケアマネジメント手法」と普段使っているアセスメントシートや課題整理総括表との連携は、どう考えるべきか。
(回答)
 本手法は、情報の収集・整理・分析の過程において、多職種連携をより円滑に実施できるよう、各専門職域で培われた根拠に基づく知見を踏まえた支援内容の「仮説」とその検討のために収集すべき情報項目を整理したものである。
 したがって、アセスメント過程の情報収集を実施する前に、本手法で整理された「想定される支援内容」や関連する情報収集項目を確認していただくとよい。そのうえで、収集した情報を整理・分析する過程では、普段活用しているアセスメントツール(アセスメントシート)を活用し、課題の抽出に繋げていただきたい。アセスメントツールにはそれぞれ特徴があるため、なかには本手法で示している視点に関する項目が必ずしも十分に含まれないアセスメントツールがある可能性もある。したがって、普段お使いのアセスメントツールと本手法の両方を上手く活用していただきたい。
 一方、課題整理総括表はその事例における課題の全体像をまとめて確認し、本人が望む生活の実現に向けて、具体的な課題をしっかりと捉えられているかを点検し、事業所や他の専門職とも共有しやすくすることを目的としている。課題整理総括表では、整理した課題に対し、具体的な支援内容を検討したうえでその方の生活の見通しを記載することになるが、初認段階のケアマネジャーなどで知見の蓄積が必ずしも多くない場合、課題に対し具体的な支援内容を想起できない場合がある。このような場合には、本手法の「想定される支援内容」を確認し、具体的な支援内容の例と個別化に向けて掘り下げるために確認すべき情報項目を確認するとよい。

(問8)「適切なケアマネジメント手法」は、ケアプラン点検で活用されるものなのか。手法を使っていない場合、ケアプラン点検で指摘されるのか。
(回答)
 現時点では、ケアプラン点検で「適切なケアマネジメント手法」の活用を必須とするものではない。ただし本手法は、他の職種の視点もふまえてどういった情報が足りていないか、また足りない情報を補うことによって、ケアマネジャーに対してどういった支援ができるかを考えるために活用できる情報が含まれている。
 したがって、保険者あるいはケアプラン点検の実施者においては、本手法の考え方と内容を踏まえ、地域における多職種連携の円滑化を図る観点から、ケアマネジメント支援の具体的な視点を検討するための基礎資料として活用いただきたい。

(問9)「適切なケアマネジメント手法」を活用している地域の事例や効果が知りたい。
(回答)
 令和4年度は「適切なケアマネジメント手法実践研修」として、全国20を超える地域で1,200名以上が参加して連続研修を行う。「適切なケアマネジメント手法実践研修」は実際の事例に本手法を当てはめながら行うものである。
 過去の研修で見られた効果の一例として、水分摂取について情報収集を掘り下げることで脱水傾向を未然に防ぐことができた事例がある。具体的には、これまで「水分を取っている」ことは把握していたものの実際にどれだけの水分を取っているのかは把握していなかったが、研修を受けて詳細に情報を取ったことで、脱水での搬送がなく夏を乗り切ったという事例である。
 また、退院時のカンファレンスで活用した例もある。病棟側、在宅側のそれぞれで、本手法をもとにして必要になる支援を想定した上でカンファレンスを行ったところ、参加者からは、限られた時間の中で焦点を絞って議論できたという声が聞かれた。

■「適切なケアマネジメント手法」の内容について


(問10)「想定される支援内容」を見ると似たような支援内容があるが、違いは何か。
(回答)
 本手法の「想定される支援内容」は、上位の理念の実現のためにどのような支援内容が必要か、という観点で整理している。つまり、大項目で示す内容を実現するために中項目と支援内容があるという構造になっている。
 したがって、上位の目的が異なるが同じような支援内容が必要となる場合、「想定される支援内容」に似たようなものが示されている。似たような支援内容については、その上位の項目(中項目、大項目)と併せて捉えるようにしていただきたい。

(問11)「アセスメント/モニタリング項目等」が非常に細かい。ここまで細かく情報を収集しなければならないのか。
(回答)
 本手法で示す「アセスメント/モニタリング項目等」は、個別化された具体的な支援内容の検討につながるよう、掘り下げるために収集・検討しておきたい情報項目を整理・列記している。したがって、ケアマネジャーが普段つかうアセスメントツールにおける情報項目と比べて細かいものになっている。
 ご本人が望む生活の継続を支えるために、個別化された具体的な支援内容を検討するためには、このくらい掘り下げた情報の収集・整理が必要であることをまずはご理解いただきたい。そのうえで、これらの情報収集をケアマネジャーが一人で担うのではなく、事業所や他の専門職、あるいは状況に応じてご本人や同居者とともに、チームで情報の収集・整理・共有を実施することを目指していただきたい。
 なお、チームで情報収集に取り組むにあたり、「なぜ、この情報の収集と共有が必要か」が問われるが、これについては「想定される支援内容」ごとに示す「支援の必要性」の説明を活用し、他の関係者の理解を得るようにするとよい。

(問12)医療の側面が強いように思うが、ソーシャルワークの側面はどのように位置づけているか。
(回答)
 「疾患別ケア」は医療の側面が強いように思われるかもしれないが、ソーシャルワーク側面を軽視しているわけではなく、それぞれの支援内容や「基本ケア」の多くの項目で対応している。
 本手法は「基本ケア」を重視していることから、まず「基本ケア」の内容と考え方を捉えるようにしていただきたい。

■「基本ケア」について


(問13)「基本ケア」の40番台の内容が捉えづらい。例えば、44番「同意してケアに参画するひとへの支援」の「同意して」は何を指しているのか。
(回答)
 ここで「同意してケアに参画するひと」とは、例えば認知症で独居の方の事例において、その方の生活を見守ったり支えたりしてもよいと申し出て関与していただける近所の住民や友人が該当する。つまり、ここでの「同意して」というのは、同意書の提出や何らかの契約関係ではなく、本人が協力してもよいという意志を表明する程度に捉えていただきたい。
 なお本項目は、このように意向を示してケアに参画する方が、事例の経過とともに負担感が徐々に増していき、バーンアウトしてしまうようなことに対する支援の視点も必要との議論を踏まえ設定したものである。具体的には、特に独居の方の事例などにおいて、その方の生活に関わるインフォーマルサポートの状況を良く把握し(エコマップなどに整理することも有用である)、キーパーソンとなっている方に過重な負担感がないかどうかをモニタリングするといった取り組みが考えられる。

■「疾患別ケア」について


(問14)「疾患別ケア」では5つの疾患が挙げられている。なぜこれらの疾患を選んだのか。
(回答)
 要介護認定の原因疾患となっている疾患、あるいは高齢者に罹患者が多く健康状態への影響も大きい疾患を念頭に選定した。
 具体的には、「認知症」および「脳血管疾患」は要介護認定の疾患となる上位の疾患という観点から、「大腿骨頸部骨折」は生活不活発に至るきっかけの大きな原因の一つであるという観点で選定した。また、「心疾患」は高齢者に罹患者が多く他の併発疾患も考慮し、医療との連携が重要であるため選定した。「誤嚥性肺炎の予防」については、疾患ではないものの、ひとたび誤嚥性肺炎を発症するとその後急速に健康状態が悪化する恐れが大きく、重度の場合はそれまでの暮らしの継続が難しくなる事例も多いため、こうした急な状態の悪化を予防することの重要性の観点から選択した。

(問15)「疾患別ケア」の「Ⅰ期」「Ⅱ期」は誰がどのように判断したらよいのか。
(回答)
 「疾患別ケア」の各シートでも示すように、「Ⅰ期」は医療との関わりが非常に大きい時期、「Ⅱ期」は生活や健康の状況が安定して継続している時期としている。どの程度の関わりがあるかは、ご本人の状況やそれまでの経過などによっても異なるため、「Ⅰ期」「Ⅱ期」の区分として、例えば退院後の月数など具体的な判断基準を設けることはしていない。
 形式的な区分よりも、ご利用者の状態に応じて捉えることが重要である。具体的には、サービス担当者会議等の場を活用してかかりつけ医等と相談し、担当のケアマネジャーが判断し、その方が安定した生活を継続できるよう、必要な支援の検討に役立てていただきたい。
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