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日本総研シンポジウム
新しい国のかたち  -連邦型地域主権国家の創造-
5月27日(火)  ホテルニューオータニ東京


モデレーターからのごあいさつ
株式会社日本総合研究所  副理事長  高橋 進
  日本の製造業大企業部門はグローバリゼーションの波に乗って復活を遂げつつありますが、この波に取り残されているのが中小企業、家計や地方といった部門です。こうした部門がグローバリゼーションへの対応力を付け、そのメリットを引き出すことができるようになれば、景気回復の波は日本経済全体に広がり、日本経済の成長力の強化、再生につながることが期待できます。
  しかしながら、中央集権による画一的な通商政策や産業振興策、中央主導の税財政制度を続ける限り、本来個性豊かな各地方の強みやそこを拠点とする企業や家計の力が発揮されることはなく、また中央への依存体質からも抜け出せず、グローバリゼーションから取り残されていくばかりです。こうした状況を打破するためには、「国のかたち」、すなわち中央集権体制を変える必要があります。

  そこで、本シンポジウムの第一部では、まず現在の国と地方の体制が続けば、地方の経済、財政、社会のさらなる劣化が避けられないこと、それが日本全体の活力の低下をもたらすことを調査部のシミュレーションで示しました。
  続いて、こうした破綻シナリオを回避するための3つの処方箋を当社の研究員から提示させていただきました。
  第一は、国と地方の関係をどう変えていくかです。他先進国のグローバリゼーションへの対応や改革の経験も踏まえながら、日本を再生させるには自立する地域の連合体で構成される地域主権国家の形成が必要であることを示しました。
  第二は、地方は国から権限や財源の移譲を受けるだけでなく、自らも自立にむけた努力が必要なことを主張しました。実は現行体制下でも自助努力で多くの成果を上げている自治体が多々あります。
  第三に、自治体の自立のためには、地域経済の自立が必要であり、そのトリガーになるのが農業であるとの主張を行いました。農業ほど地域特性の強い産業はありません。農業を通じて引き出された地域特性を、観光、食品加工、エネルギーその他の産業に応用していくことで、農業をトリガーとする地域再生につなげることができます。

  シンポジウムの第二部では、まず地方分権の文字通りの推進役である地方分権改革推進委員会の丹羽委員長をお招きして、委員会の検討状況、第一次勧告の概要、今後の勧告の内容などについてご報告いただきました。ご報告の中では、とりわけ中央省庁の抵抗振りが印象的でした。
  続いて、丹羽委員長、古川・佐賀県知事、加藤・構想日本代表、穂坂・地方自立政策研究所理事長にご登壇いただき、地方分権の進め方、農業の再生、分権によって作られる新しい国のかたちについて、ご議論をいただきました。
  分権については、国と地方の役割をきちんと分け、業務をできるだけ基礎自治体に任せ、国は補完的な役割を果たすことに徹すべきこと、そうすることで行政経費の多大な削減が見込めること、分権する際には権限、責任の所在を明確にし財源も移譲すべきこと、などが共通のご意見でした。
  農業の再生については、国際環境が激変している中でもっと消費者や海外にも目を向けるべきこと、農地改革・流通改革を進めるべきこと、多様な農業スタイルの共存を許容すべきこと、農業政策も分権すべきこと、などが共通点でした。
  新しい国のかたちのあり方について共通していたのは、折から道州制論議が高まっているが、県を集めて区割りしてみただけでは、中央集権の本質は何も変わらない。いま問われるべきは、いかにして分権を進め、地域が主体的に自己変革を成し遂げる体制を作るかであり、分権を進めていけば、自ずと国かたちがみえてくるということでした。

  今回、当社では、国のかたちを考える第一弾として、「地域主権国家の創造」について提言し、議論させていただきましたが、パネラーや多くの聴衆の方々から、こうした活動を続けるようにとの励ましをいただきました。
  今後、「地方分権」の行方をウォッチし報告させていただくとともに、反響の大きかった「農業」問題をフォローアップしていくことが、ご期待に応えることであると認識しております。
  また、取り上げるべきテーマとしてご希望の多かった「アジアと日本」、「社会保障・少子高齢化」「教育」「地域再生」などについて、「新しい国のかたち」を提言するための第二、第三弾のシンポジウムを開催させていただくことを考えております。引き続き、皆様のご指導ご鞭撻をお願い致します。