ビューポイント No.2026-021 高市政権の経済政策をどうみるか ~世界の潮流に沿った点は評価、課題は財政再建とインフレ抑制~ 2026年09月01日 石川智久今般、高市政権は、「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太方針)と「日本成長戦略」を閣議決定した。これをみると、官民の戦略投資を通じて供給力と稼ぐ力を高め、成長による税収増を通じて財政の持続可能性を確保しようとする点に特徴がある。世界的に政府主導の産業政策が復権し、経済安全保障や重要技術を巡る国家間競争が激しさを増すなか、危機管理投資や成長投資を重視する方向性は、国際的な潮流に沿ったものと評価できる。 もっとも、分野別にみると課題が多いのも事実である。まず、成長戦略は対象分野が広範であり、政策資源の分散を招く懸念がある。限られた政策資源を成長力強化につなげるには、重点分野の選択と集中を進めるとともに、非効率な支出を抑制する実施体制、政策効果を検証するPDCAの仕組み、民間資金を呼び込む制度設計、規制改革との一体的な推進が不可欠である。 財政政策では、中長期経済財政計画を通じて複数年度で財政運営を管理する姿勢が示された点は前進である。一方で、債務残高対GDP比や基礎的財政収支に関する具体的な水準・期限、毎年度の歳出総額の目安が明確でないことから、財政規律遵守の実効性には課題が残る。また概算要求も過去最大となったほか、金額を明示しない事項要求も多くなっている。GDP ギャップがプラス圏で推移すると見込まれるなか、積極財政がインフレ圧力を高めるリスクが懸念される。 社会保障では、給付付き税額控除の導入や現役世代の負担抑制を目指す姿勢は評価できる一方で、所得・資産把握のためのデジタル基盤整備が遅れれば、制度の公平性や実効性が損なわれかねない。食料品に対する消費税率引き下げについても、税率を2年後確実に戻すことで財政再建に歩みを進める必要がある。 金融政策では、骨太方針に日本銀行の自主性を尊重する趣旨が盛り込まれたことは評価できる。ただし、政府との連絡・協議を強調する記述や国債買い入れを巡る報道などを踏まえると、日本銀行の独立性をいかに実質的に担保するかが引き続き重要な論点となる。 地方創生や、外国人政策についても、政策の方向性自体は時宜にかなったものと言える。もっとも、地方創生では地域の強みに根差した実行体制、副首都構想では国益と危機管理を踏まえた制度設計、外国人政策では秩序維持の視点のみならず人口動態やAI・ロボットによる労働需要の変化を織り込んだ長期ビジョンが必要である。 以上をまとめると、成長力強化というポイントを押さえつつ、バラマキを排除できる仕組みを整備したうえで、財政再建と物価の安定にも目を配った政策運営が求められる。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)