ビューポイント No.2026-007 消費減税では困難な格差是正 ~所得増税と社会保障制度改革が不可欠~ 2026年05月20日 牧田健OECD加盟国の中で、わが国は、現役世代向け公的社会支出の少なさ、累進構造のある所得税のウエイトの低さ等から、可処分所得ベースで所得格差が大きくなっている。高齢化を踏まえると、わが国の国民負担は過少であり、現役世代、高齢世代いずれも充足できるだけの社会保障給付の原資を欠いている。国際的にみて、負担は法人課税、社会保険料に偏り、逆に、個人所得課税、消費課税は軽い。 勤労者世帯の世帯主年間収入階層別にみると、所得税、住民税、社会保険料、消費税の順で低所得者層のシェアが大きく、現役世代に限れば、消費減税は一定の所得再分配効果が期待可能。実際、一世帯当たりでみると、負担が大きいのは社会保険料ながら、消費税には逆進性が確認される。一方で、高齢化が進展するなか、勤労者世帯と無職世帯でバランスをとる必要があり、両世帯を合算して世帯主年齢階級別にみると、所得税、住民税、社会保険料、消費税の順で高齢者のシェアが大きく、消費税は世帯分布にほぼ近似する。一世帯当たりでは、社会保険料の負担が大きい一方、消費税負担は若年層ではさほど大きくなく、年齢が上がるほど大きい。 こうした状況を踏まえると、現役の低所得者層への現金給付や社会保障給付を拡充すると同時に、その原資調達および現役世代の所得再分配強化に向けて累進強化などによる高所得者層向け所得増税を行う必要がある。加えて、多額の金融資産、実物資産を保有する層の課税強化も不可欠である。一方、今後一段の高齢化が見込まれるなか、消費税率引き下げは現役世代に負担増加となって跳ね返ってくる恐れがあり、慎重であるべき。より注力すべきは、消費税減税よりも社会保険料の抑制であり、社会保険のうち「世代間の所得移転」の色彩が強くなっている分野では、世帯分布の通りに負担される消費税を通じて公費負担分を大きくするほうが、不毛な世代間対立等を生まず、有用である。 インフレ効果でわが国の名目成長、財政は改善しているが、インフレは持てるものと持たざる者の格差を拡大させるため、物価高対策には緩和的なマクロ経済政策を続けるよりも、低所得者層に的を絞った適切かつ適量の財政支援を講じ、その恒久財源の確保を制度として担保する方が望ましい。以上のように、高齢化により機能不全を起こしている社会保障制度を抜本的に見直す必要がある。 (全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)