ビューポイント No.2026-006 防衛力強化を「コスト」で終わらせないために ― 防衛支出を技術・産業基盤の強化につなげる ― 2026年05月19日 井上肇防衛費増額の効果は、予算の総額ではなく「使い方」によって決まる。国内に生まれる需要を単発の発注にとどめず、装備をつくり、使い続け、改良するための技術・人材・設備の蓄積につなげることが、技術・産業基盤の強化には欠かせない。防衛支出の需要効果を国内の技術・産業基盤の強化につなげるには、輸入依存を過度に高めず、研究開発や設備投資、国内生産・維持整備に結び付く支出を組み合わせる必要がある。問われるのは、装備を取得することにとどまらず、開発・生産・維持整備のどの機能を国内に残し、伸ばしていくかである。こうした観点から、防衛装備移転や同志国との共同開発・生産は重要な意味を持つ。これらは、日本の防衛産業を国際的な開発・生産・整備のネットワークに位置付け直す政策である。輸出額の拡大を目的化せず、透明な移転管理を徹底し、日本が担うべき中核領域の確保と継続的な技術協力を同時に追求する必要がある。技術のすそ野を広げるには、デュアルユース技術の活用も重要である。AI、ドローン、宇宙、サイバー、量子などの民生技術を防衛分野に取り込み、民間企業や大学発の技術の担い手が実証から本格調達へ進みやすい仕組みを整える。こうした仕組みは、防衛支出を防衛力と経済力の双方につなげる回路となる。防衛支出を「コスト」で終わらせないためには、限られた財源と供給力をどの領域に優先的に振り向けるかを明確にし、政策効果を検証することが欠かせない。防衛費増額の効果は、国際的なサプライチェーンのなかで日本が担うべき機能を見極めつつ、調達や国際協力等を通じて、国内に維持すべき技術・産業基盤をどれだけ強化できるかにかかっている。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)