昨今の米国のベネズエラの軍事行動やグリーンランド割譲要求は、これまでの国際社会の常識を覆すものである。その一方で、これらは昨年 12 月に米国が公表した国家安全保障戦略(The National Security Strategy、以下 NSS)に則った動きでもある。NSS は基本的に米国の安全保障戦略に関するものであるが、経済についても言及がみられ、政府の国家戦略・企業の経営戦略を考えるうえでも念頭におくべきものと言える。
今回の NSS では、モンロー・ドクトリンに通じるトランプの系論(The Trump Corollary to the Monroe Doctrine)という表現で、南米を含む西半球への安定と安全保障に米国が注力する姿勢を示している。インド太平洋については、西半球に次ぐ優先地域としており、「この地域において競争に勝たなければならない」という意志を強調した。台湾については、現状維持を支持している一方で、日本と韓国は、防衛に関する負担をもっと負うべきと名指しされた。他方、国際機関、欧州、中東、アフリカ等への関心は大幅に低下している。
また、米国をはじめ、多くの国が自国における防衛産業強化を目指すなかで、米国は同盟国に対して GDP 比5%の防衛支出を要求している。日本としては、既に積極的な対応を行っていることを米国に説明することで急激な拡大を抑制しつつ、増額した防衛費については、単に費消するのでなく、イノベーション創出や平和利用への転用など、有効活用を検討していくことが期待される。