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米国の経済政策、次の一手は~米国の変化を受けてミドルパワー諸国にも動きあり

2026年02月02日 石川智久


昨今の米国のベネズエラの軍事行動やグリーンランド割譲要求は、これまでの国際社会の常識を覆すものである。その一方で、これらは昨年 12 月に米国が公表した国家安全保障戦略(The National Security Strategy、以下 NSS)に則った動きでもある。NSS は基本的に米国の安全保障戦略に関するものであるが、経済についても言及がみられ、政府の国家戦略・企業の経営戦略を考えるうえでも念頭におくべきものと言える。

今回の NSS では、モンロー・ドクトリンに通じるトランプの系論(The Trump Corollary to the Monroe Doctrine)という表現で、南米を含む西半球への安定と安全保障に米国が注力する姿勢を示している。インド太平洋については、西半球に次ぐ優先地域としており、「この地域において競争に勝たなければならない」という意志を強調した。台湾については、現状維持を支持している一方で、日本と韓国は、防衛に関する負担をもっと負うべきと名指しされた。他方、国際機関、欧州、中東、アフリカ等への関心は大幅に低下している。

今回の NSS の内容では、南米を安全保障だけではなく、市場としても重視していることや、各国に対して依然として貿易不均衡の是正を要求していること、レアアース等のサプライチェーンの確保に尽力すること、製造業強化と防衛産業強化がリンクしていること、脱炭素に消極的であること、などが特徴として指摘できる。それを踏まえると、米国の次の一手として、以下の展開が予想される。
(1)南米市場への参入・拡大
(2)世界各国への輸入拡大要求
(3)欧州・日本等への米国内投資の早期履行要求
(4)レアアース確保等の資源調達の加速
(5)防衛力強化と製造業強化の両立
(6)脱・脱炭素と化石燃料・原子力発電によるエネルギー自給
(7)デジタルを活用した金融業のさらなる強化(同時にドルの国際基軸通貨維持)
こうした状況を見極めながら、日本としては、進出市場、米国との関税・投資交渉、自国産業の強化、経済安保等を考えていくことが重要である。

ダボス会議でカナダのカーニー首相は、法に基づく国際秩序はすでに機能しないことと、ミドルパワー諸国の結束の必要性を主張した。日本としては、同盟国である米国との関係は大事にしつつも、ミドルパワーの一つとして、欧州やグローバルサウスとの連携のあり方を考えていく必要がある。カナダがミドルパワーの集結によって進める可能性がある経済安全保障戦略として、重要鉱物の確保、AI(人工知能)への対応、自由連携協定の拡大、多国間の防衛調達の枠組み構築等が指摘されているが、こうした取り組みは日本においても検討すべき分野であると考えられる。世界の動向を見ながら、日本の国家戦略を構築することが求められている。

また、米国をはじめ、多くの国が自国における防衛産業強化を目指すなかで、米国は同盟国に対して GDP 比5%の防衛支出を要求している。日本としては、既に積極的な対応を行っていることを米国に説明することで急激な拡大を抑制しつつ、増額した防衛費については、単に費消するのでなく、イノベーション創出や平和利用への転用など、有効活用を検討していくことが期待される。


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