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ビューポイント No.2025-028

世界経済の回顧と展望~26 年は米中一時休戦も、年後半には波乱のリスク

2025年12月04日 石川智久


2025 年はどのような年であったのか、世界経済を俯瞰して考えると、次の 4 点が指摘できる。第 1 が、トランプ政権による関税や国際協調の枠組みからの離脱等が示すとおり、米国がこれまでの自由主義・国際協調主義から保護主義・自国最優先主義に転換したこと。第 2 が、米国の振る舞いと並行した金価格高騰やステーブルコイン等への関心の高まりなど、基軸通貨ドルに対する不信感の裏返しとみられる動きが目立ったこと。第 3 が、各国の株価指数が最高値を更新するなど、世界的な株価高騰が続いたことと、それを背景に格差拡大が続いたこと。第 4 が、世界的に移民への反発の動きが強まり、日本にもそれが波及しつつあることである。

2025 年にみられたこうしたトレンドは、2026 年にどうなるのか、筆者の考えを述べる。第 1 の米国の自国第一主義については、基本的には歴史の転換点を過ぎたと考えられ、その流れが続くとみている。一方で、米国は様々な面で中国経済に依存しており、完全な方向転換には時間がかかるため、2026 年は米中対立が一時休戦の年となり、米中ともに長期戦を見据えた準備を進める年となる可能性が高いとみている。第 2 のドルの信認については、かつてより落ちているとはいえ、代替候補はいずれも問題を抱えており、容易には崩れないとみている。ただし、暗号資産の広がり等、長期的な変革につながる動きが徐々に進展する可能性がある。第 3 の株価については、米国の利下げや AI ブーム等で堅調が続くとみているが、バブルのリスクも否定できないなか、過度に期待先行の動きがないかを注意をしていく必要がある。また、株価高騰が続いた場合は格差のさらなる拡大が懸念されるため、その対応も重要となろう。第 4 の外国人労働者については、各国で流入規制と選別を図る動きが続き、政治的争点ともなるなか、わが国にも影響を与え続けるとみている。

2026 年を概観すると、米中対立の一時休戦ムードのなか、表面的に混乱は起きにくく、世界の経済成長率も好不況の分かれ目となる3%をやや上回る状況が続くとみている。一方で、前述の 4 点は、短期的に大きな影響はなくても、中長期的には重大な変化をもたらす事柄と考えられ、その意味で 2026 年は、日本として先々の国際情勢変化に備えていくべき年といえそうである。

なお、2026 年は前半と後半で様相が異なる可能性がある。まず、米国では 2026 年7 月に独立 250 周年、11 月には中間選挙、12 月には G20 サミット米国開催等の政治イベントがあり、その前後でなんらかの政治的メッセージが出される可能性がある。一方、中国は 2027 年に習近平主席の 3 期目が終了するほか、建軍 100 周年となる。こうしたことを考えると、2026 年後半から 2027 年にかけて世界の政治・経済は波乱含みとなる可能性に注意する必要がある。


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