ビューポイント No.2025-019 中国の新たな過剰生産抑制策「反内巻」の狙い 2025年09月24日 枩村秀樹、佐野淳也近年、中国政府は、「反内巻」と呼ばれる過剰生産抑制策を強調するようになった。中国政府が問題視する「内巻」とは、①競争力のない生産設備の増大、②際限のない値下げ競争、③地方政府による過度な産業支援策、のことである。反内巻を重視するようになった背景には、第2次トランプ政権の発足で世界的な経済安全保障環境が大きく変わるなか、中国政府が、①米中対立の激化を前提に最先端製品の内製化に突き進むこと、②中国中心のサプライチェーン網を新たに構築すること、の二面作戦で、製造業強化策の加速を決断したことがある。その際、過剰生産分野から最先端分野への資源再配分を促す目的で、過剰生産問題をより高次の政策課題として位置付け直したのである。従来の政策は過剰生産に陥った産業へのアドホックな事後対応にとどまったのに対し、反内巻政策は統一ルールとしての事前方針という大きな違いがある。具体的には、①様々な業種が対象になること、②中国政府の介入領域が拡大したこと、③地方の産業政策の統一化を進めること、④副作用への対応策を講じること、といった特徴を持つ。反内巻政策が中国政府の狙い通りに運営されれば、過当競争の抑制と先端産業の競争力強化の同時達成が実現する可能性がある。その一方で、①製造業のダイナミズム減退、②地方経済の活力低下、といった副作用も想定される。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)