ビューポイント No.2025-014 ドル高是正・グローバルインバランスの解消に何が必要か ~トランプ関税を梃子に日欧は成長力強化、中国は消費拡大を~ 2025年07月23日 牧田健トランプ米政権は、最終的な狙いが米国の貿易赤字解消および製造業復活にあるため、足元の関税賦課に続いて、ドル高是正・ドル安を要求してくる可能性がある。実際、過去に比べてドル高期間が長期化しているが、その背景として、対先進国通貨においては、①2010 年以降潜在成長率における米国優位が定着したこと、②日本を筆頭に米国対比付加価値創出力が弱まったことが挙げられる。対新興国通貨でも、新興国は 2010 年以降成長ペースが鈍化しているほか、対米輸出を主軸にした成長パターンから抜け出せておらず、対ドルで自国通貨高を容認できない状況にあることが指摘できる。一方、米国の対外不均衡是正についても、10 年以上前にグローバル・サプライチェーンが構築され稼働してきたなか、その多くを米国内生産で代替するのは容易ではなく、できたとしても長い時間を要するとみられる。そもそも、ISバランスの観点からすれば、米国の対外不均衡拡大は、過剰消費と財政赤字の結果にすぎない。ドル高是正およびグローバルインバランスの是正には、強制的な関税やドル安誘導ではなく、米国を含めた先進国経済と新興国経済それぞれの抜本的な立て直しが不可欠である。米国自身が過剰消費および野放図な財政赤字を是正すると同時に、米国以外の先進国では、DXの推進等を通じて一人当たりGDPの伸びを高める必要がある。米中で家計消費と総固定資本形成の世界シェアが大きく異なるなど、世界経済の構造的な歪みが大きく、かつ各国輸出の受け皿としての米国集中度が高まっているなか、とりわけ中国は、消費活性化にこれまで以上に注力する必要がある。トランプ米大統領の政策は、世界経済を混乱させているものの、それが当面続く可能性が高いことを踏まえると、米国以外の国・地域は、米国の関税政策という外圧を奇貨として、経済構造の抜本改革に踏み出す機会とすべきである。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)