ビューポイント No.2025-013 「出生率、西高東低の謎」を探る 2025年07月22日 藤波匠近年、合計特殊出生率の西高東低傾向が明確化している。出生率の西高東低が認識されるようになったのはこの 10 年ほどであり、実体として、九州に比べて低い北海道・東北の出生率がある。ただし、その理由は明らかとなっていない。西高東低の主因である北海道・東北における低出生率を、有配偶率と有配偶出生率の 2 つの要因に分解してみると、九州との差異が明確になる。女性の若い時期の「有配偶率」は、大学進学率と密接な関係がある。以前は九州に比べて低かった北海道・東北の大学進学率が足元では同水準まで上昇し、それが北海道・東北における若年女性の有配偶率低下を招き、出生率を下押ししている。北海道・東北の「有配偶出生率」は、2000 年以降、ほぼ一貫して九州の 80~90%にとどまっており、これは地域特性と言える。出生率の西高東低は、北海道・東北において、以前は大学進学率が低く比較的若い時期に結婚する女性が多かったために明らかとなりにくかった同地域の有配偶出生率の低さが、大学進学率の上昇に伴う晩婚化によって、顕在化したとみられる。現状では、有配偶出生率の地域性に影響を及ぼす因子を特定するまでには至っていない。しかし、「家事・育児・介護は女性の仕事」といったアンコンシャス・バイアス(固定的性別役割分担意識)に対する認識の男女格差の大きい地域ほど、有配偶出生率が低くなる傾向が認められた。すなわち、北海道・東北では、アンコンシャス・バイアスに対する認識の男女差が大きく、それにより子どもを持つことやもう1 人産むことに対する夫婦間での合意が得られにくくなり、有配偶出生率が低くなっている可能性が指摘できる。この結論は、現段階では仮説の域を出ない。しかし、こうしたアンコンシャス・バイアスは、有配偶出生率のみならず、女性人口の流出にも影響を及ぼしているとみられる。女性の地域定着を促すためにも、アンコンシャス・バイアスそのものの解消、特に男性の認識の改善を図ることが重要と思われる。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)