RIM 環太平洋ビジネス情報 Vol.26,No.100 中国で赤字企業が増える理由 ―選別の進展と前向きな赤字企業の存在― 2026年09月14日 関辰一中国では、経済成長が続く一方、赤字企業が急速に増加している。上場企業の財務データを用いた分析によれば、赤字企業比率は2019年の9.6%から2025年に26.9%へ上昇し、上場企業の約4社に1社が赤字企業となった。こうした変化は、2010年代に問題視された一部の国有企業や、鉄鋼や石炭などの伝統産業だけの現象ではなく、近年は非国有企業やハイテク製造業にも広がっている。赤字企業増加の理由は時期によって異なる。2019~2022年は、新型コロナウイルス感染症対策としての厳格な行動制限や不動産不況を受け、飲食・宿泊業などサービス関連産業を中心に赤字企業が増加した。これに対し、2022~2025年には製造業が赤字企業比率上昇の主因となり、とりわけ情報通信機器・電子部品・デバイス製造業、その他機械類、化学工業などのハイテク分野で赤字企業数が大幅に増加した。なかでも情報通信機器・電子部品・デバイス製造業は、中国製造業の成長をけん引する分野であり、付加価値額や研究開発投資が拡大し、海外展開も進んでいる。しかし、その一方で市場シェアを巡る激しい競争の中で、設備投資競争や価格競争が過熱している。固定資産の増加率は付加価値額の増加率を大きく上回り、過剰生産能力の形成が示唆される。そして、競争の結果、利益は競争力の高い少数企業に集中している。つまり、産業全体として成長しながらも、企業間競争を通じた選別が進んでいる。さらに、赤字転落企業は必ずしも技術力や研究開発能力が低い企業ではない。研究開発投資や付加価値率で黒字維持企業に劣らなかったものの、企業規模が小さく、販売の伸び悩みや雇用調整に直面した例が多い。競争激化の中で規模の経済を十分に活用できなかった企業が淘汰されつつあることがうかがえる。また、赤字企業の中には投資家から高く評価される企業も存在する。情報通信機器・電子部品・デバイス製造業の赤字企業の約半数は市場平均を上回る株価パフォーマンスを示しており、こうした企業は研究開発投資や無形資産投資に積極的で、人材確保も継続している。このように、赤字であっても将来の成長が期待される「前向きな赤字企業」も存在する。したがって、赤字企業比率の上昇を単純に中国経済の停滞とみなすべきではない。中国経済は減速しているとはいえ、依然として成長を続けている。企業レベルでみると、し烈な競争によって多くの企業が収益悪化に直面しているが、他方で、競争力の高い企業に利益が集中し、新たな成長企業も生み出されている。現在の中国経済は、ミクロレベルで「成長」と「停滞」と「選別」が同時に進行する局面にあるといえよう。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)