RIM 環太平洋ビジネス情報 Vol.26,No.100
トランプ政権の相互関税による米中貿易構造の変化 ―関税政策の焦点は“Made in China” から“Made by China” へ―
2026年09月14日 三浦有史
トランプ大統領が導入した相互関税は、適用除外品目が多いうえ、二国間交渉で税率が引き下げられたことから、実効関税率は発表当時よりかなり低いものとなった。それでも、アメリカの実効関税率が10%を超えるのは1943年以来のことであり、米中貿易はもちろん世界貿易にも大きな影響を与えた。
アメリカの2025年の輸入の伸び率に対する国・地域別の寄与度をみると、中国がマイナスになる一方で、中国以外のアジア、とりわけASEAN、台湾、インドが大幅なプラスとなり、相互関税はサプライチェーンの再編を促したといえる。
中国の対米輸出を代替したのは主にベトナムである。アメリカのノートパソコン、ゲーム機器、モニターの輸入に占めるベトナムの割合は2025年に急激に上昇した。スマートフォン輸入では、インドが中国に匹敵する水準に達した。
中国の対米輸出を代替した国は原材料や部品を中国から輸入しており、アメリカの脱「中国依存」は対中輸入が減少したほどには進んでいない。ベトナムの輸出をけん引するノートパソコンと機械・設備は、中国の部品なしには成り立たない。インドも、スマートフォンの輸出増加に伴い中国からの部品輸入が増えるという構造的問題を抱える。
一方、2025年のアメリカの輸入において最も顕著な伸びがみられたAIサーバーは、脱「中国依存」が鮮明であり、サプライチェーン上に中国企業を置かない「中国外し」へと進んでいる。この動きは、高い機密性が求められるサーバーだけでなく、情報漏えいにつながるバックドアのリスクがある情報通信機器、サイバー攻撃のリスクがあるIoT機器に広がる可能性がある。
アメリカの貿易構造は2026年に入っても変わらず、中国の対米輸出を代替する国に対する貿易赤字が拡大している。これに伴い、「迂回輸出」をいかに規制するかという議論は、原産地を偽装した輸入品の取り締まりといった水際対策にとどまらず、輸入品の付加価値に占める中国の割合に「包括的なしきい値」(blanket threshold)を設け、それを超えた輸入品に追加関税を課すという方向に進む可能性がある。
トランプ政権の関税政策の焦点は、対中貿易赤字を減らす、“Made in China”への対応から、サプライチェーン上にある中国企業をいかに排除するかという、“Made by China”への対応に移っており、同政権が今後「迂回輸出」に対しどのような認識を示すかを注意深くみていく必要がある。
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