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RIM 環太平洋ビジネス情報 Vol.26,No.99

インドの「新興国型」AI 政策

2026年05月11日 岩崎薫里


2010年代後半以降、世界各国でAI政策の策定が本格化している。先進国政府の多くは、企業の生産性向上と国際競争力の強化に力点を置き、米中両国政府はさらに、覇権争いの一環としてもAI開発競争を繰り広げている。これに対してインド政府は、AIによって社会課題を解決し包摂的成長(inclusive growth)を実現することを目指している点に特徴がある。社会課題解決が重視される事情は、インドに限らずほかの新興国・途上国も程度の差はあれ同じであり、それを踏まえるとインド政府のAI活用は「新興国型」の取り組みといえる。

最近では、インドがAIの技術やインフラを他国に依存することは、経済的観点から好ましくないとの見方が生じている。海外で開発されたAIモデルを用いたのでは、インドが抱える社会課題を解決するのに限界があるとの認識も広がっている。それらを背景に、AI分野における「自立」を目指し、国産AIモデルの開発を促進しようとの機運がインド政府内で強まっている。

インド政府はそのために、①計算資源の提供、②AIの学習に必要なデータの整備、③多言語対応、④基盤モデルの開発支援、などの施策を打ち出した。当面、注力しているのが③の多言語対応、すなわちインドに多数存在するローカル言語の収集と翻訳である。地方在住者を中心にローカル言語のみを理解する人が相当数いることに対応するためである。

インド政府のAI政策には、デジタル公共インフラ(Digital Public Infrastructure)の考え方が底流にある。デジタル公共インフラとは、官民がデジタルサービスを提供しやすいように整備されたオンライン上のインフラであり、個人識別番号制度Aadhaarが代表例である。AI政策においても、AI開発に必要なインフラをデジタル公共インフラと位置づけ、政府自らが整備することで官民の開発を促そうとしている。それと同時並行的に、これまで構築してきたデジタル公共インフラをAIによって強化する動き、具体的には、多言語対応・音声対応の新規導入、および既存の生体認証の拡充が行われている。

インドは研究開発力の弱さがネックとなって、AI開発・運用面での自立を実現することは当面難しいものの、社会課題の解決のためのAI活用が進むことは十分考えられる。こうした試みには、研究開発力よりもインドの実情を理解し、適切に対応できることのほうが重要である。AIソリューションの様々なユースケースを編み出し、さらにそれらが新興国・途上国のモデルケースとして採用されていけば、米中とは異なる立ち位置で、世界のAI分野におけるインドの重要性が高まる姿が展望できる。


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