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RIM 環太平洋ビジネス情報 Vol.26,No.98

中国によるレアアース支配は覆らないのか ―「武器化」は「諸刃の剣」―

2026年01月23日 三浦有史


中国は世界のレアアース生産量の7割、精製量の9割を占め、世界のレアアース供給を支配する。しかし、中国は過剰生産に起因するレアアースの価格低迷に悩まされてきた。政府は、生産量や輸出量の割り当て、さらには、生産能力の削減や企業の合併・再編によってレアアースの管理を強化したものの、その効果は限定的である。

中国の輸出規制により、アメリカのレアアース調達リスクは現実のものとなった。輸出規制の影響はEV産業だけでなく、軍事産業にも及び、国防能力の低下を招くと懸念されている。米中の対立は、一見するとエスカレートしているようにみえるが、中国からのレアアースの安定的な調達が欠かせないトランプ政権は、主導権を握ることが難しくなりつつあるという点で、実際にはかなり抑制的である。

2025年4月の輸出規制の影響は、レアアース金属よりもその化合物からつくられる永久磁石の方が大きかった。中国は、単にレアアース金属を輸出するだけでなく、ネオジム磁石に代表されるように、レアアース金属を化合物、さらには、工業製品に加工する分厚い産業集積を有しており、世界の自動車産業がそれに依存しているといえる。

中国はレアアースを含む重要鉱物資源を確保するため、海外進出も積極的に進めている。ミャンマーはレアアースの調達先として重要性が増しており、世界の重レアアースの精製における中国のプレゼンスは、ミャンマーなしには成り立たない状況にある。

中国のレアアース支配が強まるのに伴い、先進国は調達安定化に向けた取り組みを強化しており、①海外資源の確保、②省資源技術・代替材料の開発、③リサイクルの強化、④海底資源の開発を進めている。とくにオーストラリアは、中国のレアアース支配を突き崩す中心プレーヤーになると期待される。

中国のレアアースの支配力は衰えないものの、①輸出規制は価格の上昇を通じて、レアアースの開発や省資源技術・代替材料の開発を促す「諸刃の剣」となること、②中国はレアアース金属の輸入国となり、中国自身も調達リスクに直面していること、③輸出規制は中国の輸出減少につながることから、対立する国に圧力を加えるレアアースの「武器化」は頻繁に実施できるものではなく、長期化する可能性も低い。

中国が「武器化」を制限される一方、アメリカも中国に依存しないレアアースのサプライチェーンを完成させることができないため、米中はいずれも相手の存在を無視できない相互依存関係が続く公算である。レアアースを巡る米中の対立は、最終的にデュアルユースを回避する規制を残しながらも、民需用のレアアースについては中国が輸出規制を緩和するという方向に向かうとみられる。


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