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RIM 環太平洋ビジネス情報 Vol.25,No.97

中国における政府補助金の実態 ―上場企業の財務データ2015年〜2023年から―

2025年09月11日 関辰一


中国政府は、新たな成長エンジンの育成や安全保障の強化を目的に、補助金支出を拡充している。ただし、政府補助金は産業政策のごく一部に過ぎず、支出規模では低利融資と税優遇の方が政府補助金より大きい。

他国の産業政策支出をみると、アメリカは研究開発への税優遇が中心で、日本やドイツは低利融資が主軸となっている。近年では中国の産業競争力の高まりがアメリカにとって戦略的脅威とみなされており、この認識がアメリカの産業政策の転換を後押ししている。

中国の産業政策支出の規模は他の国・地域を大きく上回る。補助金、税優遇、低利融資に加え、低価格での企業への土地売却といった中国固有の支援も併用しており、多様な産業支援策を講じている点も特徴的である。

上場企業の財務データからは、中国の政府補助金の配分に明瞭な戦略性が見て取れる。製造業の中では機械類および化学工業へ重点的に配分されている。また、物流コストの低減やデジタル化の促進を目的に、運輸業・郵便業や情報通信業といった非製造業の補助金比率も高い。一方で、鉄鋼業などへの配分は意外にも小規模である。

「中国製造2025」の重点分野の中でも補助金の配分に大きな違いがある。工作機械・ロボットや半導体など、れい明期にある戦略分野にはとりわけ集中的な支援が行われている。新エネルギー自動車は、一時的に支援が厚かったものの、一定の成長段階に達した後は補助金が抑制されている。

所有形態別にみると、国有企業への配分比率は2015年以降、大きく低下している。これは、従来多く見られた赤字補塡を目的とした補助金が、地方政府の財政制約や債務問題への対応を背景に抑制されていることを示唆する。

半導体産業を例に補助金の役割について検討すると、中国半導体産業の成長にとって政府投資基金や補助金が大きな要因であったとする見方がある一方、政府支援策の規模や効果は過大評価されているとする見方もある。

半導体上場企業の財務データを見る限り、売上高の急増を遂げた企業の補助金比率が必ずしも高いわけではない。一方で、補助金を多く受け取った企業は売上高の成長率が業界平均をやや下回る傾向もみられる。こうしたデータに加え、高成長を遂げた企業の事例を見ても、補助金より市場の拡大と民間企業のダイナミズムの方が産業や企業の成長における中核的な原動力であったことを示唆している。


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