リサーチ・フォーカス No.2026-055 「インフレ経済」の下で広がる所得格差 ― 2040 年に相対的貧困率は20%に達する可能性 ― 2026年10月14日 小方尚子わが国の所得格差は、長らく続いた「デフレ経済」の下で縮小傾向にあったが、近年は、「インフレ経済」への転換が進むなかで、賃金や金利、資産価格の上昇が明確化し、所得格差が拡大に転じる兆しがみられる。足元の格差拡大の背景には、①大企業と中小企業など企業間の賃金格差の拡大、②ペイ・フォー・パフォーマンスの拡大、③財産所得の増加などがある。これらの要因は、世代間の所得格差を拡大させるというよりは、むしろ同じ世代内の所得格差を拡大させる方向に作用する。今後、賃金や物価、金利の上昇を伴う「インフレ経済」が定着するという想定の下で、所得格差の先行きを試算すると、所得格差の代表的な指標であるジニ係数は、バブル期(1980 年代)と同程度のペースで上昇し、2040 年には0.4 超と高水準に達する可能性がある。高所得層が給与所得や財産所得の増加の恩恵を強く受ける一方で、中低所得層が相対的に低迷する見込みである。さらに、一般的な生活水準に比べ収入が大幅に少ない世帯の割合を表す「相対的貧困率」は、最低賃金を年率3%のペースで引き上げたとしても、足元の15%から2040 年には20%と1985 年以降で最高水準に上昇すると試算される。「インフレ経済」下での格差拡大に対応するために、収入面では、中・低所得層の収入底上げが不可欠であり、中小企業の賃金底上げに向けた生産性向上が必要となる。一方、分配面では、給付付き税額控除の導入などによるセーフティネットの強化が重要であるが、その財源をどのように調達するかが課題となる。今後、財産所得が格差を生み出す大きな要因となることを踏まえると、資産保有の実態を把握するとともに、給与所得だけでなく財産所得を含めた負担構造の在り方を議論していく必要がある。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)