リサーチ・フォーカス No.2026-043 AI・ロボットが深めるアジアの「中所得国の罠」 ― 内外需双方での「課題解決型」成長モデルへの転換が急務 ― 2026年09月10日 細井友洋アジア新興国(ASEAN・インド)では、輸出主導型の成長モデルが揺らいでいる。この背景として、米中対立をはじめとする国際秩序の変容に加えて、生成AIやロボットなど大国主導の技術革新が挙げられる。アジアの製造業は、依然として組立工程への依存度が高い。今後、主要輸出先でロボットの導入が進むにつれて、こうした工程の自動化と国内回帰が輸出の成長を阻害する可能性がある。米中でロボット導入が加速するケースでは、ベトナム、マレーシアの輸出下押し額(対GDP比)が2035 年時点でそれぞれ▲9%、▲7%と試算されるなど、アジアの「早すぎる脱工業化」を加速する恐れがある。さらに、製造業に代わるリーディング産業として期待される輸出型サービス業でも停滞が懸念される。インドやフィリピンでは、EUなど主要輸出先のAI普及によってソフトウェア開発や顧客対応・バックオフィス業務が代替され、経済が大きく下押しされる可能性がある。こうした点を踏まえると、アジア新興国には、輸出産業の高付加価値化を進めるとともに、内需型サービス業を新たな成長の柱とすることで、「中所得国の罠」を克服することが求められる。その際、内外需の双方で「課題解決型」への転換を進めることが重要となる。外需では、海外顧客の課題を捉え、製品やサービスを組み合わせて不可欠性の高いソリューションを提供する必要がある。内需では、AIの活用環境を整備してサービスの供給範囲を広げるとともに、医療、教育、交通、物流、行政などの社会課題を付加価値に変換し、国内経済の生産性向上につなげる必要がある。こうした課題に対して、日本がこれまで蓄積してきた人材育成、企業間連携、資金供給などの制度設計や運用経験を共有することは、ASEAN・インドの成長モデル転換に貢献するだけでなく、日本企業の新たな成長機会にもなり得る。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)