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リサーチ・フォーカス No.2026-036

転換期を迎える東南アジアのデータセンター市場 ― 「量」から「質」への転換へ ―

2026年08月14日 呉子婧


近年、東南アジアでは、データセンター投資が急拡大している。これには、①シンガポールの供給制約を補完する立地先としての魅力に加え、②域内のデジタル需要拡大、③各国政府の積極的な外資誘致策、④米中対立下での地政学的な立ち位置が背景にある。データセンターはAIの学習・推論を支える計算基盤として重要性を増しており、国家のデジタル競争力やデータ主権を左右する戦略インフラへと変化している。

もっとも、データセンターの経済効果を過大評価すべきではない。データセンターは、建設段階での経済波及効果や、クラウドサービスを通じたデジタル化を促す一方、稼働後の雇用吸収力は限定的である。また、サーバーや冷却設備など中核機器の海外ベンダー依存により域内への技術導入が限定されるほか、高額な機材の輸入を通じて経常収支に下押し圧力を及ぼす可能性もある。

さらに、データセンターの稼働には、電力・水資源、デジタル人材、制度面の制約が大きいことに加え、半導体輸出管理を巡る米中対立、サイバー攻撃など、安全保障上のリスクも高まっている。

こうした多面的な課題を受け、東南アジア各国は、すべての投資を無差別に歓迎する「量的拡大」から、資源効率、産業高度化、技術移転、人材育成、サイバー・経済安全保障への貢献度を基準に案件を選別する「質的選別」のフェーズへ移行しつつある。

この転換期において日本に求められるのは、長年培ってきた省エネ・高効率な設備・部材の提供と技術移転、データセンターの安定運用の知見共有と人材育成、制度整備の支援などの取り組みを、官民一体で東南アジアに展開していくことである。これらの伴走支援は、東南アジアのデジタル自律性を支えるとともに、日本企業の事業機会の拡大や、日ASEANのデジタル共生関係の構築にもつながる。


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