リサーチ・フォーカス No.2026-032 ≪2040年の日本経済シリーズ③≫ 長期金利の上昇でドーマー条件は2030年に不成立局面に 2026年08月06日 村瀬拓人、西岡慎一わが国では長期金利が上昇し、政府の利払い費も増加している。長期金利(実効金利)が名目経済成長率を下回る「ドーマー条件」は、政府債務残高対GDP比を安定させる重要な前提である。わが国では2010年代を通じて同条件が成立してきたが、その環境は大きく変化しつつある。OECD諸国を対象とした分析では、政府債務が大きい国や潜在成長率が低い国ほど、ドーマー条件が成立しにくいことに加え、インフレ変動が大きい国や中央銀行の国債保有が少ない国でも成立しにくい傾向が確認される。この結果は、供給制約の強まりと金融政策の正常化が進む局面では、ドーマー条件を維持することが従来以上に難しくなることを示唆している。将来試算によると、わが国では2030年頃にドーマー条件が恒常的に不成立となり、2040年には実効金利が成長率を2%ポイント上回る。この場合、長期金利は4%台前半に上昇する計算になる。この背景として、金融政策が正常化される影響がかなり大きい。加えて、ドーマー条件の不成立は政府債務を押し上げ、財政リスクプレミアムの上昇を通じて同条件を一段と成立しにくくする自己強化的な悪循環ももたらしうる。米国や英国、ドイツなどでも、ドーマー条件が不成立となる局面が見込まれるが、主要国でも突出した政府債務を抱えるわが国では、そうしたプロセスが生じやすい。ドーマー条件が成立しない環境では、政府には中央銀行に金融政策の正常化を先送りさせ、利払い費を抑えたい誘因が生じやすい。しかし、それは市場の信認を損ない、かえって財政の持続可能性を低下させる恐れがある。政府は金融政策の正常化を前提とした財政運営に転換するとともに、ドーマー条件を政策運営の評価軸として位置づけることが望まれる。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)