リサーチ・フォーカス No.2025-067 米中対立で30 兆円規模の生産移転 ― アジアは組立拠点化、高付加価値な中間財の移転は限定的 ― 2026年03月06日 細井友洋第一次トランプ政権発足以降、電子機器分野を中心に、中国から他国・地域に2,000億ドル(30 兆円)超の大規模な生産移転が生じた。とくに、ベトナム、インド、タイなどのアジア諸国・地域が移転先の7割を占めており、アジアは電子機器の輸出拠点としての地位を高めている。しかし、生産移転の内訳をみると、その多くはスマートフォンやノートパソコンなどの最終製品にとどまっており、電子部品など中間財の生産移転は限定的である。この結果、中国を除くアジアでは、電子機器のグローバル・サプライチェーンにおける組立工程への特化が進んでおり、中間財の輸出競争力は停滞したままである。貿易統計からも中間財(電子機器)の競争力は、2017 年以降、中国を除くほとんどの国・地域で改善していないことが示されている。「中所得国の罠」が懸念されるアジアにとって、付加価値の高い中間財の産業基盤を強化することが不可欠であるが、電子部品の本格的な生産移転には時間がかかると予想する。ASEAN・インドの産業基盤は中国ほど整備されておらず、移転候補となる分野は半導体の後工程やスマートフォンの部品に限られるほか、受け皿となり得る地域もベトナム、マレーシアなど一部にとどまるためである。付加価値が高い工程の移転が特定の国・地域に限定されることで、アジアの産業高度化は広がりに欠け、生産性向上のペースにも差が生じると考えられる。とくに、人口規模の大きいインドやインドネシアで中間財の産業集積が進まない場合、アジア全体の成長モメンタムを損ない、「中所得国の罠」から脱しきれない可能性がある。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)