リサーチ・フォーカス No.2025-047 本邦上場企業財務の現状と 今後求められる対応の方向性 ~ 資本コストを意思決定の軸に収益性の改善を ~ 2025年11月07日 吉田剛士近年、本邦上場企業は投資家を意識した経営が求められているものの、市場の評価は米企業などと比較して差がある状況。その背景として、本邦上場企業の経営意識や財務状況をやや詳しく見ると、以下の通り。(経営陣の意識)経営陣の資本コストに対する認識は不十分。東証による要請(「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」)への対応状況は、上場企業全体に浸透しているとはいえないほか、売上高や利益の水準、伸び率を最重要経営指標としている経営者が依然として多い状況。(投下資本利益率:ROIC・・・収益性×資本生産性)ROICの低さは収益性、とりわけ売上総利益率の低さに起因。資本生産性に関しては、有形固定資産の効率性は欧米企業対比高いものの、棚卸資産の効率性ではやや劣る状況。(株主資本利益率:ROE・・・収益性×資本生産性×資本構成)財務レバレッジが欧米企業対比低調に推移。株主還元の増加によって株主資本の圧縮は進んでいるものの、有利子負債の活用が進んでいないことが背景。(財務健全性)財務運営は保守的。有事の際のレジリエンスが高いと評価できる一方、成長機会を逃す恐れあり。本邦上場企業の財務の現状を踏まえ、企業価値向上のため今後求められる対応の方向性は以下の通り。①資本コストを意思決定の軸とし、最低でも資本コストを上回る水準まで資本収益性を改善する必要性を認識すること。②資本収益性を改善する手段として、競争力の強化を通じて、利益の源泉である売上総利益率を高めることを重視すること。③資本収益性を高めた企業については、有利子負債も活用し、成長投資を積極化すること。足元では、クロスボーダーM&Aや事業再編といった前向きな動きも出てきており、モメンタムを高める必要あり。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)