リサーチ・フォーカス No.2025-044
【サプライチェーン再編シリーズ⑥】太陽光パネル国内製造とその拡大の可能性 ~ 太陽光発電の将来の重要性を考え、国家主導の戦略的対応が必要に ~
2025年10月28日 ルーカス・ヘイゼン、ジェームズ・パターソン、野木森稔
脱炭素社会の実現に向けて太陽光発電の役割は世界的に拡大している。今後、太陽光発電は主要な電力源となることが期待されるが、現状、太陽光パネルのほとんどが中国で製造され、世界各国は中国製品に大きく依存している。将来的に太陽光発電が拡大し、仮にも中国が輸出制限を課すといったことが起きれば大きな問題となるなど、各国のエネルギー安全保障でのリスクが高まっていく可能性が高い。各国で国内・域内での太陽光パネルの製造能力強化の必要性は高まっている。
各国の動向をみると、太陽光パネルの国内製造強化の動きと成果はまちまちであるが、米国では顕著な国内製造増加が確認された。米国は、バイデン前政権下で成立したインフレ抑制法(IRA)により大規模な産業支援を実施しており、それが国内生産につながったと言える。その他、豪州や欧州では、明確な成果はまだ見られないが、同様の国内生産拡大のための政府支援が加速している。
こうした国家主導による大規模な産業支援は、これまでタブーとされてきた。しかし、中国製造業の強みは今や「安価なモノづくり」ではなく、「先端技術による競争力」という新たなステージに入ったとする「チャイナ・ショック2.0」という表現が話題になっている。これに対抗すべく、「中国式」とも表現できる産業政策に舵をきり、太陽光産業の支援を進める国は増え、今後も広がっていくと予想される。もっとも、米国での成功には、中国企業の出資を受けた太陽光パネルメーカーの生産拡大が大きく寄与している。技術で先行する中国企業の投資も受け入れることも、産業政策を機能させるために重要な要素になっている可能性がある。
わが国でも、太陽光パネルに関して国家主導の戦略的な対応が急務と言える。次世代型太陽電池である「ペロブスカイト太陽電池」への支援を急速に拡大しており、同電池を中心にパネルの国内製造の拡大を実現できれば、将来のエネルギー安全保障におけるリスクを大きく低減することができよう。
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