リサーチ・フォーカス No.2025-043 半導体関税によるアジア経済への影響 ― 最終製品の輸出減とアジア域内の供給網を通じた間接影響に留意 ― 2025年10月10日 室元翔太トランプ政権は相次いで関税措置を導入してきたが、半導体やICT製品の大宗は、現時点で追加関税の対象となっていないため、関連製品を多く輸出するアジア各国・地域は関税の悪影響をあまり受けていないと考えられる。今後、半導体関税が導入されれば、アジアから米国への半導体やICT製品の輸出が直接的な打撃を受けるほか、ICT製品の生産に必要な半導体などのアジア域内貿易にも間接的な影響が生じる点に留意を要する。米国の半導体関連製品の輸入需要が直接的・間接的にアジア諸国の生産をどの程度誘発しているかを試算すると、直接需要はコンピューターやスマートフォンなどの最終製品を中心に年間2,700億ドル強(アジアGDPの0.8%)、間接需要はこれらの需要に誘発された半導体チップなどで年間500 億ドル強(同0.2%)に相当する。半導体チップなどの間接需要は、アジアから米国への直接需要よりも大きく、アジア域内の半導体貿易への悪影響も無視できない。直接・間接合計の影響は、とくに、台湾(GDPの8.7%)、ベトナム(同7.0%)、マレーシア(同3.2%)などで大きい。現状では半導体関連製品の対米輸出は好調であり、アジア経済の牽引役となっているが、今後のアジア経済を展望する上では、半導体関税の動向や対象範囲を注視していく必要がある。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)