リサーチ・アイ No.2026-007
コーポレートガバナンス・コード改訂のポイント~ガバナンス改革の主軸は「形式」から「実質」へ、取締役会の実効性向上による成長投資の促進に期待~
2026年04月14日 吉田剛士
本年4月、金融庁及び東京証券取引所は、コーポレートガバナンス・コード(以下、コード)の改訂案を公表。2015年にコードが策定されて以降、わが国のコーポレートガバナンスは大きく進展した一方、形式的な対応にとどまる例もみられ、各主体の間で取り組みの質に差が存在するとの指摘あり。
改訂案では、企業が中長期的な価値向上に向けた本質的な取り組み(成長投資等)に注力できるよう、「コードの実質化」にフォーカス。全体の方向性として、原則主義(プリンシプルベース・アプローチ)への回帰、コードのスリム化、を指摘。
具体的には、細目化していたコードについて、コンプライ・オア・エクスプレインの対象となる原則を抽象的かつ概念的なものに限定し、具体的な内容や趣旨・背景に関しては、新たに「解釈指針」を新設。また、新設された「序文」では、各社の状況に応じて原則の趣旨・精神に沿った実践を促すとともに、コンプライ・オア・エクスプレインのいずれを選択する場合であっても、その理由について丁寧な説明を行うことが望ましい旨を記載。
個別項目では、以下の3点がポイント。第1に、成長投資の促進。具体的には、取締役の役割・責務として、現預金等を成長投資等に有効活用できているか不断に検証を行うべき旨を記載。これらは、ややもするとアクティビスト等に株主還元を要求する材料として使われる恐れがあるものの、あくまで持続的な成長と中長期的な企業価値向上を目的としたものであり、短期的な株主還元を促すものではない旨を強調。
第2に、取締役会の機能強化。わが国では、取締役会事務局の所掌範囲は企業ごとで区々であり、取締役会等を支援する機能が複数部門に分散しているケースが大宗。コーポレートガバナンスに係る事項を一元的に統括し、監督と執行に係る組織間の橋渡し役を担う取締役会事務局(コーポレート・セクレタリー等)の強化を推進すべきと提言。
第3に、有価証券報告書(有報)の総会前開示。改訂案では、有報を株主総会開催日の3週間以上前に提出することが望ましいと改めて提言。もっとも、現状の実務慣行を踏まえ、企業サイドとして必ずしも容易ではないとの認識の下、当局として有報と事業報告等の一本化や、有報の記載事項の整理といった制度的な検討も並行して進める旨記載。
上場企業としては、社外取締役の人数など形式面を整備するフェーズから、自社の個別状況に応じてコードを解釈し、主体的にコーポレートガバナンスを実践するフェーズへ。一方、当局としては、今回の改訂が成長投資の促進や開示負担の軽減に繋がっているか不断に検証するとともに、中長期的な視点を持つ投資家の育成・誘致など周辺施策も着実に進展させ、市場全体で企業の持続的な成長を後押しするエコシステムを構築することが重要。
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