リサーチ・アイ No.2025-122 一部大都市への出生数の集中が加速 2025年12月23日 藤波匠厚生省の人口動態統計によれば、わが国出生数は、一部の大都市への集中傾向が一層顕著に。1~7月累計の概数(日本人のみ)によれば、2025年の出生数は、全国で前年同期比▲1万2000人以上(▲3.2%)の減少。その内訳を見ると、全国20の政令指定都市と東京都区部(以後、21都市)の減少数は3,000人以下にとどまる一方で、残りの1万人近くが大都市を除く地域に集中。減少率(前年同期比)でみても、21都市は▲2.2%にとどまる一方、大都市を除く地域は▲3.7%と依然として高い減勢を維持。ただし、21都市間の優勝劣敗も顕著であり、東京都区部が前年比増加に転じた一方で、相模原市(▲9.9%)や川崎市(▲6.9%)のように、全国平均を大きく超える減少率となった都市も。人口吸引力の強い東京都区部や福岡市に隣接するエリアでは、若い世代の流出などにより、出生数減少に歯止めをかけるのが難しい状況。東京都では、都区部(23区)の強さが際立つ形。都内でも、都区部を除く都下(多摩地域や島しょ部)では、依然として出生数は下げ止まりが見られないが、都区部は減少傾向にあった24年までとは一転して、25年は増加。背景には、東京都が豊かな財政力を背景に手厚い少子化対策に取り組みだしたことや、東京問題とされていた保育所の不足が解消されたことによる子育て環境の改善、さらには共働き夫婦の増加に伴う通勤の負担を減らす居住地選びにより、若い世代が都区部に集中する動きがある模様。総務省住民基本台帳人口移動報告によれば、24年まで増加傾向であった20歳代の東京都の転入超過数は、そのほぼ全てが都区部への流入となっている。近年東京の住宅価格、家賃の高騰が顕著となっているが、それでも若い世代の都区部流入は継続。都道府県別では、石川県など出生数が増加に転じた自治体は複数あるものの、東北各県をはじめとする少なからぬ県は、依然として大幅な減少が持続。合計特殊出生率は、東京都が引き続き最も低い水準にあるものの、低下のペースは比較的緩やかな一方、北海道や東北など一部地域が東京都の水準に接近。各地方自治体が少子化対策に注力するなかでも、一部の大都市に出生が集中する傾向は、今後一層顕著になる可能性あり。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)