リサーチ・アイ No.2025-105 米国で進む消費の二極化 ―資産効果は高所得層に集中、関税にあえぐ低所得層― 2025年10月29日 森田一至米国の消費支出は総じて堅調に推移しているが、高所得層と低所得層の間で二極化が進行。食料や日用品などの非裁量的支出が勢いを欠く一方、娯楽財・サービスや輸送サービスなど裁量的支出が消費をけん引。この背景として、非裁量的支出の割合が大きい低所得層が消費を抑制した一方、裁量的支出の割合が大きい高所得層が消費を拡大させた可能性。高所得層と低所得層で消費動向が異なる背景として、以下3点が指摘可能。第1に、賃金上昇率の違い。関税による企業負担の高まりなどから低スキル労働者を中心とする雇用調整が続いており、足元の低付加価値産業の賃金の伸びは低下傾向。一方、情報産業やビジネスサービスなどの高付加価値産業では賃金が持続的に上昇し、足元の賃金格差は拡大。第2に、価格上昇品目の偏り。非裁量的支出品目は相対的に上昇。とくに家賃では、住宅価格の上昇が続いたことなどを背景に価格が再び上昇。一方、高所得層での消費割合が大きい裁量的支出品目の価格は、輸送、通信などを中心に抑制。第3に、株高による資産効果。株高の恩恵は高所得層に集中。家計が保有する株式や投資信託などの金融資産の約9割は所得上位20%が保有。最近の株高による配当収入の増加やセンチメントの改善を通じて、外食・娯楽などのサービス消費や高級品などへの消費を押し上げた可能性。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)